共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
ヒマラヤの氷河融解を抑制するデブリの熱特性の計測とモデル開発 |
新規・継続の別 | 継続(平成29年度から) |
研究代表者/所属 | 名古屋大学大学院環境学研究科 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 藤田耕史 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
坂井亜規子 | 名古屋大学大学院環境学研究科 | 研究員 |
2 |
福井幸太郎 | 立山カルデラ砂防博物館 | 主任学芸員 |
3 |
砂子宗次朗 | 名古屋大学大学院環境学研究科 | 博士課程後期課程3年 |
4 |
佐藤洋太 | 名古屋大学大学院環境学研究科 | 博士課程前期課程2年 |
5 |
曽根敏雄 | 北大低温研 | |
6 |
森章一 | 北大低温研 |
研究目的 | アジア高山域の山岳氷河は気候変動や諸地域の水循環を把握する上で重要な観測対象である。しかし、ヒマラヤ地域の大型氷河はその多くが下流部を岩屑(デブリ)に覆われており、そのことが氷河変動の推定に大きな不確実性をもたらしている。デブリの熱特性は時空間的に非一様であることが先行研究によりわかっており、デブリの熱伝導率は時間変動するということが分かっている(Nicolson and Benn, 2012)。本研究ではネパール・ヒマラヤ、ロールワリン地域のトランバウ氷河より採取されたデブリサンプルを用いて、デブリの熱特性がデブリの温度、含水率等によってどのように変化するのかを把握することを目的としている。 |
研究内容・成果 | 昨年度の共同利用により申請者らは熱伝導率センサと実験装置をデザインし作成した。今年度の4月よりセンサの検定を行い、2016年、2017年に現地で採取された9種類のサンプルを用いてデブリの熱伝導率の温度・含水率依存性を求めるために実験を開始した。5月から12月にかけて恒温水槽を用いて1 ~ 30 °Cの間で8パターンの温度(1, 2, 3, 4, 5, 10, 20, 30 °C)に変化させ、各温度につき5パターンの含水率(0, 2.5, 5.0, 7.5, 10 %)の組み合わせを設定し、熱伝導率の測定を行った。 また、2018年10~11月にかけて申請者たちは対象氷河での現地観測を実施し、1年分の気象データを回収するとともに、デブリの温度データ、現地での熱特性の測定を行い、実験により得られたデータとの比較を行った。 そして2019年2月には低温科学研究所の低温室を使用し、氷点下でのデブリ熱特性測定実験を実施した。氷点下の3温度(-10, -6, -2 °C )に対してそれぞれ常温時の測定と同じように5パターンの含水率を組み合わせてデブリの熱伝導率を測定。同時に氷点下における熱伝導率センサの検定も行った。結果の一例を図に示す。 実験の結果、氷河上のデブリの熱伝導率はデブリの含水率に依存して大きく変化することが分かった。このことにより、気象データ(降水データ)を用いて、デブリ熱伝導率の時間変化を推定し熱伝導モデルを補正することができる可能性が示唆された。今後は共同利用に得られた知見をもとにモデルを再構築し、これまでに得られた気象観測データを用いて再計算を行い、デブリ層内の温度データを用いて検証を行っていく予定である。 |
成果となる論文・学会発表等 |
佐藤洋太, 藤田耕史, 井上公, 砂子宗次朗, 對馬あかね, 坂井亜規子 (2018) Structure from Motion技術を用いたネパールヒマラヤ・トランバウ氷河における2007-2017年の表面標高変化. 日本地球惑星科学連合大会, 幕張, May 20-24, 2018, poster. 砂子宗次朗, 藤田耕史, 坂井亜規子 (2018) ネパールヒマラヤ・トランバウ氷河における二年間の質量収支現場観測. 日本地球惑星科学連合大会, 幕張, May 20-24, 2018, oral [invited]. Sato Y, Fujita K, Inoue H, Sunako S, Sakai A, Tsushima A, Podolskiy EA, Berthier E, Kayastha RB (2019) Spatial distribution of ice cliff in Trambau Glacier, Nepal Himalaya. 23rd Alpine Glaciology Meeting, Innsbruck, Austria, Feb 28 - Mar 1, oral. |