共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

大気・雪氷・植生融合分野における北海道の大気エアロゾルの動態変化
新規・継続の別 継続(平成14年度から)
研究代表者/所属 富山大学大学院理工学研究部(理学)
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 青木一真

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

川島正行 北大低温研 助教

2

宮﨑雄三 北大低温研 助教

3

的場澄人 北大低温研 助教

研究目的 エアロゾルが気候影響にどのような影響を与えているかについて、北海道大学低温科学研究所屋上にて1997年より連続観測を行っている。本研究の目的は、北海道におけるエアロゾルの光学的特性の時間・空間変動が気候にどのような影響を与えているかを研究背景に、大気のみならず、雪氷や植生環境に及ぼす影響について、他分野融合研究を進めたい。特に、季節変動の中で起こる黄砂現象や森林火災の影響などの極端現象は、北海道でもその影響が確認されているが、ただ単に輸送されていただけでなく、ローカルな森林帯や冬期の積雪に覆われた時期での動態解析の必要性を感じている。
2018年の札幌における0.5µmのエアロゾルの光学的厚さとオングストローム指数の月平均値   
研究内容・成果 北海道における大気エアロゾルの長期モニタリングにより、季節変化などの長期的な時空間変動の特徴や本州との違いなど(Aoki and Fujiyoshi, 2003, Aoki, 2008, 2013)がわかってきた。長期観測による他では得られない貴重なデータを蓄積し研究を進めてきた。本研究は、1997年より札幌市(北海道大学低温科学研究所屋上)において、太陽光を利用したエアロゾルの光学的特性の観測を継続して行った。また、札幌と同様な観測を、網走(網走地方気象台)、苫小牧(北海道大学苫小牧研究林)でも連続観測を行っている。それらの観測結果から、まず、エアロゾルの光学的特性の変動を示していく。図は、2018年1月から12月までの札幌上空(北海道大学低温科学研究所屋上)における0.5 µmのエアロゾルの光学的厚さとオングストローム指数の月平均値を示したものである。エアロゾルの全量(鉛直積分されらた量)である0.5 µmのエアロゾルの光学的厚さは、4, 6, 10月にピークをもつような季節変化が観測され、ピーク月は少し違うものの昨年同様の観測結果が得られた。オングストローム指数との比較により、春(4月)は大粒子にピークを持つ黄砂粒子の飛来によるものと考えられ、初夏(6月)は微小粒子にピークを持つ大気汚染や森林火災の影響が考えられる。8月にエアロゾルの光学的厚さは高くないものの、オングストローム指数のピークが見られ、一部、森林火災起源の植生の燃焼によるシベリアからの影響が見られたと考えられる。また、秋(10月)のピークは、春ほど顕著ではないが、黄砂粒子の飛来によるものが考えられる。冬は、積雪の影響で太陽が出る日数が限られ、他の月に比べると観測データ数が少ないが、大気の状態は比較的きれいな傾向が見られている。引き続き、観測を継続して、長期的な変動を観測し、北海道地域における長期観測により、中緯度から輸送される越境大気汚染物質の影響や高緯度地域から輸送されるPM2.5や黄砂や森林火災の影響など、短期変動から長期変動まで、雪氷や植生分野も含めた気候への影響評価していきたい。最後に、2017年12月に打ち上げられた気候変動観測衛星「しきさい」との比較は、まだ、初期結果ながら打ち上げ1年後の精度目標画達成され、さらに精度向上と越境大気汚染物質(PM2.5)の影響や黄砂粒子や森林火災の影響など、短期変動から長期変動まで、気候への影響を評価したい。とりわけ、北海道に輸送される越境大気汚染と森林火災の影響については、大気を混濁させ、それが森林域や雪氷域に沈着し、様々な影響を及ぼすことが多くなっているため、このような動態解析から複合的に研究を進めたい。
2018年の札幌における0.5µmのエアロゾルの光学的厚さとオングストローム指数の月平均値   
成果となる論文・学会発表等 Maki, T., Furumoto, S., Asahi, Y., Lee, K. C., Watanabe, K., Aoki, K., Murakami, M., Tajiri, T., Hasegawa, H., Mashio, A., and Iwasaka, Y.: Long-range-transported bioaerosols captured in snow cover on Mount Tateyama, Japan: impacts of Asian-dust events on airborne bacterial dynamics relating to ice-nucleation activities, Atmos. Chem. Phys., 18, 8155-8171, https://doi.org/10.5194/acp-18-8155-2018, 2018.
青木一真、網走地方気象台におけるエアロゾルの光学的特性の観測(網走地方気象台セミナー、網走、2019年3月4日)
Aoki, K.,:Long-term Observation of Maritime Aerosol Optical Properties measured by ship-borne sky radiometer.(AGU Fall Meeting 2018, Washinton DC, USA, 2018.12.12)
Aoki, K.,: Study of influence of temporal and spatial scale of solar radiation measurements on validation of GCOM-C/SGLI (Joint PI Workshop of Global Environment Observation Mission 2018: Tokyo 2019.01.22)