共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

西部ベーリング海およびアナディール湾の観測立案のためのワークショップ
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 東京大学大気海洋研
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 安田一郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

平譯 享 北大水産 准教授

2

鈴木光次 北大院地球 教授

3

渡邊 豊 北大院地球 准教授

4

原田尚美 JAMSTEC グループリーダー

5

山下洋平 北大院地球 准教授

6

岡崎裕典 九州大学 准教授

7

小畑元 東大大海研 准教授

8

田副博文 弘前大 助教

9

井上睦夫 金沢大 准教授

10

長尾誠也 金沢大 教授

11

齊藤宏明 東大大海研 教授

12

乙坂重嘉 原子力研 主任研究員

13

小川浩史 東大大海研 准教授

14

宗林留美 静岡大 准教授

15

亀山宗彦 北大院地球 准教授

16

田中雄大 東大大海研 研究員

17

藤尾伸三 東大大海研 准教授

18

柳本大吾 東大大海研 助教

19

後藤恭敬 東大大海研 大学院生

20

和賀久明 北大水産 大学院生

21

芳村毅 電中研 主任研究員

22

西岡純 北大低温研

23

大島慶一郎 北大低温研

24

関 宰 北大低温研

25

中村知裕 北大低温研

26

小野数也 北大低温研

27

的場澄人 北大低温研

28

三寺史夫 北大低温研

29

深町 康 北大低温研

30

江淵直人 北大低温研

研究集会開催期間 平成 29 年 8 月 28 日 〜 平成 29 年 8 月 29 日
研究目的 我が国の隣接している西部北太平洋は生物生産が高く、世界でも有数の水産資源が豊富な海である。この豊かな恵みを生み出している背景には、オホーツク海やベーリング海などの縁辺海が密接に関わっていると考えられる。このシステムの全体像を明らかにするために、北太平洋周辺の北方縁辺海と親潮を経由して北太平洋へと至る長大な物質循環システムを考慮しつつ解明する必要がある。そこで低温研共同利用によって国内の多くの機関から研究者を取り込んだ研究体制を整え、これまでデータの得られていないアリューシャン列島周辺およびベーリング海北西部に焦点を当てて、観測を基軸にした研究を展開することを目指す。
  
研究内容・成果 H29年8月28日〜8月29日に研究集会を低温科学研究所で開催した。
この研究集会では、これまでの研究で得られてきた環オホーツ海域の海洋循環、物質循環に関する情報を整理し、データの空白域となっているアリューシャン列島周辺およびベーリング海北西部においてどのような観測を実施するべきなのかを議論し、今後予定されている研究航海に向けて観測計画を立案した。現時点で得られている研究成果を基に、太平洋の物質循環・生物生産システムの全体像を捉える為の研究内容を整理した。下記はワークショップで報告された内容。
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ワークショップ:2018年ロシア船航海打合せ
日時:8月28日13時30分〜8月29日15時まで
場所:低温研 3F講堂
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★ロシア船の現状の紹介
北大低温研・西岡准教授より、極東ロシア海洋気象学研究所(FERHRI)との共同研究の実施体制、ロシア政府への許可申請の内容について説明が行われた。FERHRIと低温研で締結している研究協力協定に基づいて、2018年夏季にアリューシャン列島周辺およびベーリング海北西部で日露共同観測を実施することが確認された。ロシア政府にクリアランスを得るための書類を日露共同で準備し、2018年5月にモスクワに提出した。クリアランス申請の内容には、CTD観測、係留系観測、乱流観測、栄養物質観測、トレーサー観測、生物パラメータ観測、ピストンコア観測が盛り込まれている旨説明があった。
★各研究機関の観測申請内容の紹介
1)物理系班:安田(東大大気海洋研)より申請した内容に関して次の説明があった。2018年の航海で予定している観測としては次の2つが含まれる。カムチャツカ海峡における係留観測を実施し、海峡を通過する流量を測定する。カムチャツカ半島やアリューシャン列島沿いにおける乱流をVMPで直接観測し、海洋の混合過程を定量評価する。
2)堆積物班:原田(JAMSTEC)、岡崎(九大)、関(北大低温)より堆積物採泥計画について次のように紹介があった。採泥の目的は次の2つ。(1)北太平洋の中深層の起源域と時空間変動を解明すること、(2)ベーリング海からアナディル湾における氷期から現在までの生物生産研究を実施すること。これらの研究を実施する為に必要なピストンコア採泥地点等の説明があった。
3)生物班:鈴木(北大地球環境)、平譯(北大水産)から生物関連の観測の内容について説明があった。2018年航海では基礎生産および新生産を測定し、加えて植物プランクトン群集組成を色素、検鏡、遺伝子解析を用いて調べる。また、水中光学観測を実施し、衛星による基礎生産見積もりのためのアルゴリズム構築のパラメータを収集する。また野口(JAMSTEC)から、動物プランクトンの群集組成解析および窒素同位体の測定を実施し、窒素同位体を反映した生態系モデルの構築を目指す内容が紹介された。
4)化学班:西岡(北大)より、親潮域上流に位置する西部ベーリング海およびアナディル湾が、栄養物質供給にどのように寄与しているのかを調べるため、分布やフラックスを定量的に観測するための計画が説明された。また、小畑(東大大気海洋研)・田副(弘前大)より、Nd同位体の測定を実施し、水塊の起源を探る研究内容が紹介された。山下(北大)より、溶存有機物の金属リガンドとしての循環過程の研究に取り組むことが報告された。また宗林(静大)より、DOCの定量的な測定を実施し、ベーリング海が北太平洋の有機炭素循環にどのように寄与しているかを把握するための観測内容が紹介された。野村(北大水産)、李・渡辺(北大地球環境)より、西部ベーリング海およびアナディル湾での炭酸系の観測の実施内容について説明があった。炭酸系のパラメータを測定し、亜寒帯域・極域のパラメタリゼーションの開発を目指す旨説明があった。亀山(北大地球環境)より、ベーリング海大陸棚からのメタン放出量の評価を実施する旨説明があった。乙坂(原子力研)および長尾(金沢大)からは、ヨウ素放射性同位体を利用した海氷融解水トレーサー研究、およびラジウム放射性同位体測定による大陸棚由来物質のトレーサー研究を実施する旨紹介があった。
★全体としての取りまとめ
2018年に日露共同研究で実施する観測航海について、各分野から何を観測すべきかの提案があり、研究目的や内容を整理することができた。来年度(H30度)の早い時期にもワークショップを実施し、クリアランス取得後に、ロシア側からの許可内容と我々の計画内容を照らし合わせ、実際の観測実施に向けて最終的な計画を仕上げていくことを全員で確認した。
  
研究集会参加人数 30 人