共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

大気・雪サンプル中の太陽光吸収性エアロゾルの挙動及び起源同定のための基礎的研究2
新規・継続の別 継続(平成28年度から)
研究代表者/所属 北海道大学大学院工学研究院
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 安成哲平

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

青木輝夫 岡山大学 教授

2

的場澄人 北大低温研 助教

研究目的 北大構内(札幌)において,大気エアロゾル観測・捕集及び積雪サンプルの分析から,大気エアロゾルの動態変動把握の研究,フィルターからのエアロゾル要素分離手法開発の研究,積雪中BC量把握に関する以下の研究を行った:(1)昨年度からまとめている2016年3月の黄砂判別の事例解析研究の論文化;(2)雪サンプルを使用して,黒色炭素(BC)およびダストの低温室における積雪融解時の流出効率の実験的研究;(3)昨年度から継続している大気エアロゾル捕集フィルターからダストとBCを分離・定量する研究;(4)札幌の積雪中BCの把握のため研究及びその捕捉率把握のための研究.
  
研究内容・成果 (1) 論文が日本気象学会のレター国際雑誌SOLAに受理・出版された(Yasunari et al., 2017;成果1).成果は北海道大学からプレスリリースされた(https://goo.gl/79dtwS)(低温研ニュースNo. 44も参照:https://goo.gl/Ar3kLk).2017年6月3日の北海道新聞(https://goo.gl/hn2Yd8)などのメディアでも本成果が取り上げられた.
(2) 平成29年度北極域研究共同推進拠点研究者コミュニティ支援事業共同推進研究課題「積雪不純物の融解時の流出挙動に関する研究」の一環として,積雪断面観測時に採取された表面2 cmの雪試料を使用し,低温研の5℃の実験室内クリーンベンチで積雪融解実験を行い,その融解水を2-3回採取し,流出した黒色炭素(EC:道総研環境科学研究センターで分析)とダスト粒子体積(2-60 μm;低温研のコールターカウンターで分析)から累積流出効率の算出を試みた.EC及びダスト(4つの粒径区分に分けて議論)は半分程度の融解では,それぞれ20%未満,40%未満(各々の粒径区分)の累積流出効率であった(成果2,成果3).
(3) 低温研裏の観測小屋にて,2016年8月から2017年8月の間に大気エアロゾル捕集を石英繊維フィルター(QFF;予め2時間850℃で燃焼済)に行い(トラベルブランク, TB, も同時に採取),その30試料を分析した.フィルターのEC及びダストを想定したFeの分析(850℃で2時間燃焼した試料)及びフィルターの吸光度(波長240-2600 nm).捕集試料からTBのEC量・Fe量・吸光度を引いたものを真値とした.EC量と吸光度の各波長における相関係数は波長2110 nmで最も相関が有意に高くなり(r=0.92, p < 0.01),Fe量と吸光度は,波長255 nmで最も相関が有意に高くなった(r=0.97, p < 0.01).これらより,フィルター1枚からECとダストに関連するFeの情報を簡易的に定量・分離できることがわかった(成果発表4, 5).
(4) 低温研の積雪断面観測日2016年3月4日に全層サンプラーで3回採取・合計したサンプルから(1回の雪量が少なかったため)測定・算出された札幌の全層雪のEC濃度は31.9 ppbwであった.また,2017年1月13日に低温研裏の露場で採取された雪サンプルを使って,ECの捕捉率を議論した.サンプル濾過量が少ない(100g)ケースでは,ECが検出限界以下などで測定ができない場合もあったが,500-1000 gの濾過のケースでは,捕捉率は76.1-100%となった(成果発表6, 7).
  
成果となる論文・学会発表等 1. Yasunari, T. J., et al. (2017), SOLA, 13, 96-101, doi:10.2151/sola.2017-018.
2. 高橋秀真(2018),平成29年度北海道大学工学部環境社会工学科衛生環境工学コース卒業論文, 22 pp.
3. 安成哲平, 高橋秀真, 他2名, 第2回SIGMA-IIワークショップ, つくば, 2018年2月.
4. 並木曹汰, 安成哲平, 他4名, 2017年度日本気象学会秋季大会, P343, 札幌, 2017年10-11月.
5. 並木曹汰(2018), 平成29年度北海道大学大学院工学院環境創生工学専攻修士論文, 48 pp.
6. 石井和樹,安成哲平,他4名, 2017年度日本気象学会秋季大会, P145, 札幌, 2017年10-11月.
7. 石井和樹(2018),平成29年度北海道大学大学院工学院環境創生工学専攻修士論文, 46 pp.