共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
フィブロイン-フィブリノゲン混合低温ゲルに関する研究 |
新規・継続の別 | 継続(平成28年度から) |
研究代表者/所属 | 群馬大学 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 外山吉治 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
岩上祐樹 | 群馬大学 | 博士前期課程 |
2 |
小島瑠美 | 群馬大学 | 博士前期課程 |
3 |
落合正則 | 北大低温研 |
研究目的 | フィブロインは天然高分子線維としてバイオマテリアルや医療材料としての利用が盛んに行われている.一方,フィブリノゲンは血液凝固の主要因子で酵素トロンビンの作用によりフィブリンへと転移しフィブリンゲルを形成する.また,フィブリノゲン水溶液を低温度下(4℃以下)にさらすと,トロンビンが作用することなく熱可逆的なフィブリノゲンクライオゲルを形成する.フィブロインとフィブリノゲンはともにさまざまな医療材料として広く利用されている.本研究はフィブリノゲン-フィブロイン間の相互作用を測定するとともに,フィブリノゲンを吸着させたフィブロインファイバー不織布を作製し,フィブリノゲンの溶出挙動について調べた. |
研究内容・成果 | [エレクトロスピニング法による絹フィブロイン不織布の作製] 蚕繭からのフィブロインの抽出条件およびエレクトロスピニング操作の至適条件についての検討を行った.抽出の至適条件は,ソーダ精練によるセリシンの除去を行い,フィブロインを臭化リチウム水溶液へ溶解することにした.エレクトロスピニング操作の至適条件は,フィブロイン濃度5.0 wt%,溶液供給速度2.2 ml/hとした.これらの条件のもと,しなやかで十分に厚みがあり,コレクタからの剥離が良好な絹フィブロイン不織布を作製することができた. [シートの不溶化処理とフィブリノゲン溶出挙動] フィブロイン不織布の不溶化処理条件の検討を行った.その結果,処理溶液の種類や濃度を調整することで不溶化の状態をコントロールすることができる事が分かった.不溶化処理溶液,処理時間および洗浄ついては,エタノール/グリセリン組成比が50 / 50の混合溶液にて30分間不溶化処理を行い,その後純水による洗浄を行う操作が最も良い結果が得られた.この処理を行うことによって,未処理時と比較して不織布シートからのフィブロインの溶媒(トリス緩衝生理食塩水)への溶出を約1/ 25に抑えることができた.不溶化した不織布シートを10 mm×10 mmにカットして 10 mg/mlフィブリノゲン水溶液を10 μl浸透させた後,凍結乾燥を行った.このシートを溶媒に入れ,吸光度測定によってフィブリノゲンの溶出挙動を観察した.その結果,溶媒に浸漬後すぐにフィブリノゲンの溶出が始まり,約30分で飽和値に至った.溶出時間のコントロールにはフィブロインとフィブリノゲン間の相互作用を知る必要がある.そこで,水晶振動子マイクロバランス(QCM)測定によってフィブロイン—フィブリノゲン間相互作用について調べた.その結果, 図に示すように両者の間には相互作用がないことが分かった.そこで,フィブリノゲンの溶出をコントロールする方法の一つとしてクライオゲルを利用した.10 mm×10 mmにカットしたフィブロインシートに 14 mg/mlフィブリノゲン水溶液を10 μl浸透させた後,4 ℃以下の低温にさらしてシート上にフィブリノゲンクライオゲルを形成させてから凍結乾燥を行った.このシートを溶媒に浸漬し,吸光度測定によってフィブリノゲン溶出挙動の観察した.その結果,クライオゲル形成を経ることでフィブリノゲンの溶出割合が飽和に至るまでの時間を約2倍遅延させることができた. |
成果となる論文・学会発表等 |
論文 Y.Toyama, M.Shimizu, M.Ochiai, T.Dobashi, Effects of urea and NaCl on the fibrinogen cryogelation, J.Biorheol., 31(1), 12-15, 2017. 学会発表 伊藤優吾,外山吉治,土橋敏明,落合正則,フィブリノゲンクリオゲル形成に与えるカルシウムイオンの影響,第65回日本レオロジー討論会,新潟,2017年10月17日. |