共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

民生用重量計を利用した積雪重量自動計測システムの評価
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 東京都立産業技術高等専門学校
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 高崎和之

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

若林良二 東京都立産業技術高等専門学校 教授

2

的場澄人 北大低温研

3

三寺史夫 北大低温研

4

高塚徹 北大低温研

研究目的 北海道大学低温科学研究所環オホーツク観測研究センターでは、これまで北サハリンに観測所の設置、海洋ブイを流す等によりオホーツク海域の環境観測を行ってきた。観測データの収集は主にデータロガーに記録されたデータを現地にて回収してきた。近年は衛星通信回線を用いたデータ伝送も可能であるが、回線使用料や通信機材が高額となる欠点がある。
 本共同研究の目的は、オホーツク海域で収集された各種気象観測データを用いて無人、無電源でも長期にわたり安定的かつ効率的に運用できる収集する廉価でシンプルなシステムを構築し、その可能性と性能を探ることである。
図1 観測結果(平成29年12月) 図2 観測結果(平成30年2月) 
研究内容・成果 ロードセルを使用した民生用体重計(以下、体重計)をベースに検討を重ねて積雪重量計を試作し、その評価を実施した。本研究に用いた体重計(タニタ HD-660)は、底面四隅に設けられた脚部にそれぞれ三線式ロードセルが内蔵されており、本研究では荷重によって変化するロードセルの出力電圧を計装増幅器内蔵AD変換器(AVIA HX711)によってディジタル信号に変換し、シングルボードコンピュータ(Raspberry Pi 3)を用いて自動的に記録・伝送した。試作した積雪重量計(センサ3台、記録装置1台)は、平成29年12月2日に北海道大学低温科学研究所圃場に設置し10秒ごとに重量を計測・記録させた。観測データは4G回線を用いたインターネット接続により、1時間毎に都立産技高専のサーバに転送され、遠隔観測も可能となっている。観測は現在も継続中であるが、3月13日現在まで欠測は無く、システム全体の安定性には問題がないことが確認でき、民生品を利用した安価なシステムで積雪重量の観測が行えることが確認できた。

1.観測結果(12月)
図1に平成29年12月の観測結果を示す。22日以降は後述するトラブルによって観測が中断したため、22日までの結果を示している。図1より、降雪の度に重量が増加していることが確認できる。また、その際の積雪密度は約0.3g/cm^3であり、先行研究で知られている値と一致する。このことから、積雪初期の段階では提案手法による観測が有効であると思われる。なお、積雪深は、気象庁より公表されているアメダス(札幌)の観測結果である。

2.小動物によるケーブルの破断被害
 12月22日午前2時頃から各センサの測定値が異常を示すようになり、翌日現場を確認したところ、センサと記録装置を接続するケーブルが破断していた。周囲には小動物によるものと思われる足跡やセンサ部を掘起こした跡などが多数見られ、ケーブルの保護方法を検討する必要があることが分かった。また、観測自体は中断したものの、観測結果の自動転送を実施していたため異常を早期に発見し、対応することができたことから、自動観測だけでなく遠隔観測が可能である提案手法の優位性が確認できた。

3.観測結果(2月以降)
 破断したケーブルを交換してフレキシブルパイプで保護する対策を実施し、2月2日に観測を再開した。再開後の観測結果を図2に示す。この修理にはセンサの再設置を伴ったため、ゼロ点がずれている。また、圃場の積雪によりセンサ部の下に板を設置できなかったため、大きな線型誤差を含んでいる可能性が高いと考えられるが、センサ設置後2週間程度かけて荷重が徐々に増加していく様子や、降雪や降雨強度に比例して重量が変化する様子が確認でき、システムが正しく動作していることが確認できた。しかし、前述の理由により計測値に対する信頼性の評価が今後の課題として残っている。
図1 観測結果(平成29年12月) 図2 観測結果(平成30年2月) 
成果となる論文・学会発表等