共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
バルク液液相分離を利用した結晶化 |
新規・継続の別 | 継続(平成28年度から) |
研究代表者/所属 | 徳島大院理工 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 鈴木良尚 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
佐藤正英 | 金沢大総合メディアセ | 教授 |
2 |
勝野弘康 | 立命館大理工 | 助教 |
3 |
佐崎元 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 本申請で取り扱うのは、主に研究代表者のテーマの一つである、液液相分離を経由したタンパク質結晶化であり、この研究で得られた知見は、液液相転移もしくは相分離を経由して起こる氷の結晶化において、特に環境相が複数の物質からなるケースに応用できる可能性が高い。 今年度は、鈴木が遠心濃縮によって起こる液液相分離時の各液相の濃度を決定したのち、結晶表面のその場観察を行うための技術開発を行うことを目的とした。 佐崎は鈴木が育成した結晶の成長界面のハイエンド顕微鏡による詳細その場観察を行う。 佐藤は、液液相分離と結晶核生成の間の理論的考察を行い、勝野はモデル系を考え、計算機実験を行うことを目的とした。 |
研究内容・成果 | バルク液液相転移によって得られた濃厚相中で結晶化したニワトリ卵白リゾチームの結晶の構造解析の結果は、現在Crystal Growth & Design誌に投稿し、結果待ちである。投稿準備に並行して、Protein Data Bankにも結晶構造を登録し、原著論文が受理され次第、公開する予定である(PDB ID = 5YIN)。 液液相分離を介した結晶成長プロセスの定量的な解析には実はまだ問題があることが分かった。分子ステップが観察できる正方晶系結晶が得られる条件では、明らかに異なるモルフォロジを持った別の結晶(恐らくは斜方晶)が共存してしまい、分離することが難しい。恐らく濃度分布と多形の核生成の間には相関があると考えられるが、濃度分布の定量測定の方策が立てられないままに年度末を迎えてしまった。バルク液液相分離の系における結晶成長プロセス研究の新たな課題を見出すこととなった。 その代りに、枯渇凝集引力系のコロイド結晶の結晶化プロセス(Suzuki et al. Crystals Vol.6, No.7, 80, 2016.)において、高分子電解質の濃度が濃い場合における長距離秩序を持たない可逆凝集体の生成と、その凝集体と結晶との結合界面における結晶への再配列のプロセスをとらえることができた(徳島大学、南園仁美の研究結果)。結晶化過程において、既に界面における粒子の拡散定数をもとめ、定性的な粒子の振る舞いを明らかにできているが、更に定量化するために、界面への粒子の吸着エネルギーを求めてみると、通常の化学反応における活性化エネルギーオーダーのエネルギーであることが明らかになった。この値の妥当性を評価するために、熱エネルギー、および重力効果とのの比較考察を行ったところ、妥当な値であると判断した。今後はこの系において、結晶成長の様々なパラメタを詳細に実測し、それと共存する凝集体の間の粒子のやり取りをリアルタイムで明らかにすれば、液液相分離を介した結晶化に関して有益な情報が得られるものと考えられる。特に、結晶の成長界面とその上に接触した可逆凝集体の間の粒子のやり取りは、氷の成長界面における疑似液体層と結晶の間のエネルギーのやり取りのモデル系として使えるかもしれない。粒子レベルでのやり取りを実測できる強みである。 |
成果となる論文・学会発表等 |
Hiroyasu Katsuno and Makio Uwaha, Effect of impurities on chirality conversion by grinding, Phys. Rev. E 95, 062804, Published 30 June 2017. Masahide Sato, Step Bunching Induced by Immobile Impurities in a Surface Diffusion Field, J. Phys. Soc. Jpn. 86 (11), 114603, Published 13 October 2017. |