共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

吹雪の鉛直多層エネルギー交換モデルによる大気および積雪特性の検証
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 富山大学研究推進機構極東地域研究センター
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 杉浦幸之助

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

庭野匡思 気象庁気象研究所 研究官

2

的場澄人 北大低温研 助教

研究目的 吹雪による視程悪化や吹きだまりの発生は,依然として現在社会の自然災害であり,大きな問題となっている.吹雪の早期検知は,このような被害を軽減するために重要である.そこで本研究では,野外観測データを用いて,これまで開発してきた吹雪の鉛直多層エネルギー交換モデルで計算される大気および積雪特性の変化を検証する.これにより,吹雪を早期に検知するための手法開発に資することを目的とする.
  
研究内容・成果 本研究の積雪および気象観測サイトは北海道大学低温科学研究所露場である.2017年10月にこの露場に吹雪計を設置した.気象要素は通年で観測されており,積雪断面観測は2017年12月から開始されている.なお,現時点でも露場は積雪に覆われており,長期にわたる吹雪データを得るために,年度末の2018年3月26日から27日にかけて吹雪計を撤収して吹雪データを回収する予定である(本報告書提出日は2018年3月23日).そこで,これまでに入手できている同露場での降積雪データを用いて,吹雪の鉛直多層エネルギー交換モデルの検証を試みた.厳寒地にも適用可能で,地表面の熱水収支を正確に計算することを目的に開発された積雪モデル(Yamazaki, 2001)に吹雪モデルを組み込んだ陸面過程モデルを用いた.吹雪モデルには,吹雪の発生プロセス,移動プロセス,昇華プロセスが考慮されている.露場の気温・湿度・風速・短波放射・長波放射・降水に関する気象観測データにより陸面過程モデルを駆動させ,吹雪モデルの検証のために,同露場の積雪および吹雪観測データ(積雪深と吹雪質量フラックス)を使用した.その結果,積雪深の時系列変化からは吹雪による昇華蒸発の影響はほとんど見られなかった.また,吹雪観測と吹雪モデルによる吹雪質量フラックスの時系列変化にはよい対応が見られた.ただし,吹雪の発生が観測された日であっても,吹雪モデルでは吹雪未発生と算出される日が散見された.そのため,吹雪の発生と積雪表面の物理量との関係を新たに組み込む必要があると考えられる.今後は,各種積雪および吹雪物理量の継続した現地観測のもとで吹雪の鉛直多層エネルギー交換モデルを様々な気象条件下で検証することにより,吹雪環境下での大気および積雪特性の変化を抽出していくことが必要である.
  
成果となる論文・学会発表等 K. Sugiura, S. Ooi, T. Tozawa, Observational study on spatial development structure of blowing snow. JpGU-AGU Joint Meeting 2017, ACC38-03, 2017年5月22日.