共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

半島・海峡・海底地形がつくる海流ジェットと渦の形成メカニズム
新規・継続の別 継続(平成24年度から)
研究代表者/所属 国立研究開発法人・海洋研究開発機構
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 美山透

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

三寺史夫 北大低温研

研究目的 日本周辺の海流は、黒潮や親潮などの強い海流が流れる場所に列島が存在し、多くの半島地形や海峡が海流に影響を与えている。このことは、例えば大西洋の湾流とは異なる興味深い特徴であり、特異な海流の様相を見せている。地形の影響は、それぞれの地点ごとに別々に研究がされる傾向にあるが、本研究の目的は、地形が海流に与える影響に関してモデル実験や解析解を導くことにより、一般的な理論を導き、理解を深めることである。
  
研究内容・成果 北太平洋移行領域には、準定常ジェット(磯口ジェット)が存在する。我々の理論では傾圧ロスビー波の特性曲線を用いて準定常ジェットの形成を説明できると考えている。重要なのは500m程度の海膨地形上の時計回りの順圧流である。この順圧流が亜寒帯側の傾圧特性曲線を南に曲げ、亜熱帯の傾圧曲線との収束を作ることで、そこにジェットが形成されるというのが仮説である。
本年度はまず傾圧ロスビー波の特性曲線に対する地形性ロスビー波の効果について再考した。これまでは地形性ロスビー波を考慮に入れる必要があると考えてきた。しかし、2層モデルの解析式による考察から、1層目と2層目の層厚が大きく異なる場合には、地形の傾斜にかかわらず無視できるぐらい小さいことがわかった。これは地形成ロスビー波の効果を、順圧と傾圧のカップリング項である、いわゆるJEBAR項がキャンセルすることによる。またロスビー波が地形の効果によって一層に捕捉される(surface trapped wave)になることにも対応している。この再考の結果、傾圧ロスビー波の特性曲線は、惑星ベータ効果と順圧流によって決まるこという結論に至った。地形の効果は、渦との相互作用によって順圧流をつくることを通して、傾圧ロスビーに影響を与えることであらわれる。
以上の傾圧ロスビー波の特性曲線の見直しに加えて、ロスビー変形半径の大きさの見直しにより、海洋研究開発機構の海洋再解析FRA-JCOPE2を対象として理論を適用した時に、昨年度までよりも一致が良いことがわかった。すなわち、FRA-JCOPE2を2層モデルと見立てた場合に、亜寒帯の薄い層厚が亜寒帯から亜熱帯側に貫入することで強いフロントを作り、磯口ジェットを作るが、その様子を傾圧特性曲線でうまく説明できるようになった。昨年度までは順圧流の効果を割り引く必要があったが、それが必要なくなった。
これまでの磯口ジェットの理論を、2層モデルの理想的実験(Miyama et al. 2018)、FRA-JCOPE2再解析への適用(Mitsudera et al. 2018)という2つの論文にまとめた。
  
成果となる論文・学会発表等 論文
1) Miyama T., H. Mitsudera, H. Nishigaki, and R. Furue, Dynamics of a Quasi-Stationary Jet along the Subarctic Front in the North Pacific Ocean (the Western Isoguchi Jet): An Ideal Two-layer Model. Journal of Physical Oceanography. doi.org/10.1175/JPO-D-17-0086.1, in press, 2018
2) Mitsudera, H., T. Miyama, H. Nishigaki, T. Nakanowatari, H. Nishikawa, T. Nakamura, T. Wagawa, R. Furue, Y. Fujii, and S. Ito, Low ocean-floor rises regulate subpolar sea surface temperature by forming baroclinic jets. Nature Communications, 9, 1190, doi:10.1038/s41467-018-03526-z., 2018

口頭発表
1) 三寺史夫, 美山透, 西垣肇, 古恵亮, 傾圧ロスビー波の特性曲線‐再考‐, 日本海洋学会2017年度秋季大会, 仙台, 2017/10/15, 日本海洋学会2017年度秋季大会, 仙台, 2017/10/15