共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

Rain-on-Snow Event が雪氷圏の自然災害に与える影響の評価
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 新潟大学災害・復興科学研究所
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 河島克久

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

松元高峰 新潟大学災害・復興科学研究所 特任准教授

2

伊豫部勉 京都大学大学院工学研究科 特定准教授

3

石井吉之 北大低温研

研究目的  積雪期の降雨現象は,欧米ではRain-on-Snow Event(以降ROS)と呼ばれている。ROSは比較的少ない雨量であっても大きな災害を誘発することがある。しかし,日本ではROSによる災害に特化した研究はこれまでなく,災害の実態やROS時の気象特性は明らかにされていない。そこで本研究では,北海道を対象としてROSが自然災害に与える影響を評価することを目的とする。このため,北海道において災害を誘発したROS事例の収集・分析を行い、ROS災害の特徴を明らかにする。また,北海道のアメダスデータの解析から,災害を誘発する可能性のあるROSの発生頻度の特徴,地域的な違い,長期変化傾向を明らかにする。
  
研究内容・成果 (1) 新聞検索によるROS災害の調査
 北海道新聞データベース「どうしんDB」を用いて,2000/2001年積雪期から2014/2015年積雪期までの15積雪期間を検索の対象として,雪崩災害,土砂災害(土砂崩れ,崖崩れ,土石流等),洪水災害(河川増水による道路冠水,家屋浸水,道路崩落・陥没等)を抽出した。新聞検索によって抽出された各災害について,災害発生地点の位置を記事内容等から特定するとともに,その地点近傍の複数のアメダス観測点等の気象データ(積雪深,降水量,気温)を調べ,災害発生日もしくはその前日にROSが出現していたものをROS災害として特定した。その結果,北海道では合計300件を超えるROS災害事例が抽出された(ただし今後,精査が必要)。この数は新潟県など北陸地方に比べて著しく多い。また,北陸地方に比べて,洪水災害の件数が多いこと(北陸地方では土砂災害が最も多い),融雪期(3〜5月)発生数が多いこと(北陸地方では厳冬期(1〜2月)に多い)などの特徴が明らかになった。
(2) アメダスデータを用いたROSの抽出とトレンド解析
 北海道内のアメダスの1時間データ(降水量・積雪深・気温)を用いてROSを抽出した。解析期間は1983/1984年積雪期(11月〜5月)から2014/2015年積雪期までの32年間である。抽出条件は,積雪が存在すること,および連続雨量が10 mm以上であることの2つである。連続雨量10 mm以上としたのは,災害を誘発する可能性のあるROS を対象とするためである.なお,雨量は降水量と気温のみから推定した。抽出されたROSの年発生数の時系列データ(32年間)についてトレンドの検定を行った。その結果,北海道では地域によってROSの発生数が大きく異なるが,後志・檜山・渡島・胆振・釧路・根室の各地方で発生数が多いことが明らかになった。また,その内,後志・檜山・渡島地方で有意な増加傾向が認められることが分かった。今後,ROS発生頻度の地域差や標高による違い等に着目して解析を進めていく。
  
成果となる論文・学会発表等