共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

森林火災による北方林の攪乱動態を予測する数理モデルの開発
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 神戸大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 石井弘明

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

原登志彦 北大低温研

2

長谷川成明 北大低温研

研究目的 極東ロシアでは、近年の気候変動や社会情勢の変化にともない森林火災が頻発している。森林火災は大規模な生態系攪乱であり、広範囲に及ぶ植生変化をもたらすことから、景観レベルの森林動態に影響を与える。また、北方林では火災後に露出した地表面が熱せられ、永久凍土が後退することによって土壌有機物の分解が進むなど、森林の炭素循環にも影響する。本研究では、極東ロシアにおける森林火災の増加によって、将来的に植生がどのように変化するのかを予測することを目的とし、寒冷域植物生理生態研究室が長年蓄積してきた、カムチャッカ半島における植生データをもとに、森林火災による北方林の攪乱動態を予測する数理モデルを開発する。
森林火災動態モデルのアウトプット(10年分) 火災後40年が経過した林分における樹木の分布 火災後100年が経過した林分における樹木の分布
研究内容・成果 ロシア、カムチャッカ半島では、2000年代前半に森林火災後の経過年数の異なる林分において、森林植生の調査が行われた(Ishii et al. 2015)。これらのデータから、火災直後は地下部に生き残った根茎から直径数10mの広い範囲にわたってポプラが萌芽更新すること、地上部が生存しているシラカバが主幹基部から萌芽更新することなどが明らかとなった。火災後40年が経過した林分では、ポプラの多くは枯死し、カラマツの実生更新が進行していた。さらに、火災後200年が経過した林分では、カラマツが優占していた。このように、森林火災後の経過年数によって優占樹種が変化していくことから、森林火災の再来頻度が変われば景観を構成する森林の種構成が大きく変化すると予測される。
このような森林動態のデータをもとに、本研究では森林火災動態の空間モデル(spatially explicit forest fire-dynamics model)を開発した。同モデルでは火災後の森林を想定した二次元平面にポプラ、シラカバ、カラマツ3種の植物個体が配置され、実測データにもとづいた各樹種の繁殖様式に応じて萌芽更新や種子繁殖を行い、林分内で更新する。今年度の共同研究では、実測データにもとづいたモデルの基本構造およびパラメータの初期設定を行い、10年目までのテストランを行った。その結果を40年生の林分の実測データと比較したところ、ポプラの密度が実測値よりも低く、カラマツの密度は高い、など一致しない部分がみられた。
 今年度は初期調査の結果にもとづいた、初期設定のみでモデルを動かしたため、再調査のデータにもとづいた成長速度、死亡率などの設定がなされていない。そのため、来年度は実際の植生変化をより正確に再現できるように、再調査のデータも含めてモデルの構造およびパラメータ設定の検討・調整を行う。
森林火災動態モデルのアウトプット(10年分) 火災後40年が経過した林分における樹木の分布 火災後100年が経過した林分における樹木の分布
成果となる論文・学会発表等