共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
泥炭の好気的分解にともなうCO2放出量の定量化 |
新規・継続の別 | 継続(平成25年度から) |
研究代表者/所属 | 北大大学院農学研究院 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 平野高司 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
石井吉之 | 北大低温研 |
研究目的 | 高緯度地域から熱帯まで広く分布する泥炭地は,巨大な量の炭素を土壌有機物(泥炭)として蓄えてきた。しかし,森林伐採や火災,排水をともなう土地利用変化(農地やプランテーションへの開発)により,近年,泥炭の好気的分解(CO2排出)が促進され,泥炭火災が頻発している。本研究では,マレーシア・サラワク州にある熱帯泥炭地の異なる3つの土地利用について,自動開閉式土壌チャンバーシステムを用いて泥炭からの主要温室効果気体(CO2とCH4)の放出速度を連続測定し,泥炭の好気的分解速度を定量化する。また,環境要因(地温,地下水位,土壌水分など)との関係を解析することで,好気的泥炭分解の変動要因を明らかにする。 |
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研究内容・成果 | 近年,熱帯泥炭地では大規模な農地開発のために排水路が形成され,地下水位が低下して乾燥化が進んでいる。微生物による泥炭の好気的分解と泥炭火災による熱帯泥炭地のCO2排出は全球の炭素循環に無視できない影響を与えている。地球温暖化抑制の観点から土地利用変化にともなうCO2排出量の定量化が必要とされ,特に,熱帯泥炭の好気的分解に関するフィールドでの長期連続データの蓄積が強く求められている。 本研究はマレーシア・サラワク州にある熱帯泥炭地の3つの異なる土地利用(オイルパームSBW,二次林CMC,原生林MLM)に80 cm深まで根切りした根切区 (TR) と未処理の非根切区 (NTR) を設け,不透明PVC製のチャンバー(高さ40cm,内径25cm,有効容積0.0177 m3,底面積0.0491 m2)をそれぞれ8台,合計16台を2015年1月 (SBW),5月 (CMC),8月 (MLM) に設置した。 現地カウンターパート(サラワク州熱帯泥炭研究所)の協力を得ながら,データロガー(CR1000, Campbell)及びレーザー吸光ガス分析計(Ultraportable Greenhouse Gas Analyzer (915-0011), Los Gatos Research)を用いた自動計測システムにより,泥炭分解(微生物による有機物の好気的分解量, TR区)と土壌呼吸(微生物呼吸+根呼吸, NTR区)による泥炭からのCO2およびCH4放出速度を各チャンバー1時間間隔で測定した。また,地下水位(GWL),地温(5 cm深),体積土壌含水率(0–30cm深, SWC)を,それぞれ投げ込み式水圧センサ(HTV-050KP, Sensez),熱電対,TDRセンサー(CS616, Campbell)を用いて30分間隔で計測した。得られたデータをもとに,日平均CO2放出速度と環境要因(地下水位,地温,土壌水分量など)の関係を解析した。 2016年9月から2017年10月までMLMのGWLは−0.25〜0.25 m,地温は25.4〜28.0ºC,SWCは0.67〜0.96 m3 m3だった。各区の日平均CO2放出速度はGWLを用いたロジスティック式で有意に回帰され (R2はNTRで0.82,TRで0.86),低いGWLでCO2放出速度が促進した。このことは泥炭土壌の乾燥が泥炭分解を促進したことを示唆している。一方,日平均CH4放出速度はGWLを用いたガウス式で有意に回帰され (R2 = 0.48),GWLが+0.1 mで最大値を示した。このことは嫌気的条件の発達によりCH4生成が促進されること,湛水深の増大でガス拡散が抑制されることを示唆している。年積算CO2排出量 (g C m2 yr1) はNTR区 (919) とTR区 (902) の間に有意差はみられなかった。年積算CH4排出量は4.31 g C m2 yr1だった。今後,CMCでも同様に解析する。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
[1] Ishikura K, Hirano T et al. Soil carbon dioxide emissions due to oxidative peat decomposition in an oil palm plantation on tropical peat. Agriculture, Ecosystems & Environment 254C, 202–212. [2] 石倉 究,平田 竜一,その他. 熱帯泥炭林におけるCO2排出量とその制限要因. 第27回日本熱帯生態学会年次大会. 奄美, 2017年6月. [3] 石倉 究,平田 竜一,その他. 熱帯泥炭地の自然林および二次林におけるCO2排出量とその制限要因. 日本土壌肥料学会2017年度仙台大会. 仙台, 2017年9月. [4] 石倉 究,その他. 熱帯泥炭地の二次林における土壌CO2・CH4排出量とそれらの制限要因. 2017年度日本土壌肥料学会北海道支部秋季大会. 札幌, 2017年11月. [5] 石倉 究,その他. 熱帯泥炭地の二次林における土壌CO2・CH4フラックスの日変化および季節変化の制限要因. 日本農業気象学会北海道支部2017年大会. 札幌, 2017年12月. [6] 石倉 究,その他. 熱帯泥炭林の微地形が土壌CO2・CH4排出量に与える影響. 日本農業気象学会2018年全国大会. 福岡, 2018年3月. |