共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
大気・雪サンプル中の太陽光吸収性エアロゾルの挙動及び起源同定のための基礎的研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北海道大学 大学院工学研究院 |
研究代表者/職名 | 助教 |
研究代表者/氏名 | 安成哲平 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
青木輝夫 | 岡山大学 | 教授 |
2 |
村尾直人 | 北海道大学大学院工学研究院 | 准教授 |
3 |
的場澄人 | 北大低温研 |
研究目的 | 積雪断面観測中に採取された雪サンプル及び大気捕集フィルターサンプルの太陽光吸収性エアロゾル(Light-Absorbing Aerosols: LAA)のデータの測定方法の簡略化及び取得したデータからLAA起源同定への応用のため、大気及び雪サンプル中のLAAを光学的に分析し、他の化学分析方法によって取られたデータ(大気エアロゾルデータも含む)と相互比較を行い、フィルターの光学的分析から濃度を定量する精度の高い簡易測定手法を開発を目的とする。また、LAAに関連した大気中エアロゾルの常時モニタリングから動態変動の把握も行う。そのための初期的な基礎データを低温研裏の雪及び大気フィルターサンプル・観測から取得し、議論する。 |
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研究内容・成果 | 札幌における大気エアロゾル・雪サンプリング及びその大気捕集・ろ過フィルター分析とデータ解析を通じて太陽光吸収性エアロゾルの簡易測定方法の確立を目指すための研究(1),また大気中のエアロゾルの挙動を把握するための常時モニタリングを通した研究(2)を行った.(1)においては、雪サンプルを用いた研究では,昨年度の冬季に低温研と共同研究で週二回の積雪断面観測時に採取した雪サンプル(2016年1月8日以降)を使用した.その成果について,分担者青木教授と的場助教及び気象研究所の関係者と2月2日に低温研にて議論を行い,最終的に外崎(2017)にまとめた(以下,概要抜粋):融解水ろ過フィルターの吸光度を日立分光光度計(U-4100; 240-2600 nm)で測定し,ペアで作成したろ過フィルターの一枚は6Nの強塩酸100mlを滴下して炭酸塩除去を行った.その後,フィルターを環境科学研究センターの黒色炭素・有機炭素分析を熱分離光学補正法(Model 2000A; IMPROVEプロトコル使用)で行った.炭酸塩除去の効果は春季に特に大きかった.Elemental Carbon(EC)は炭酸塩除去を行った場合の1085 nmの波長の吸光度と最も相関が有意に高く(99%信頼限界),この波長を使ってEC-吸光度の検量線作成の可能性が見出された.また詳細は割愛するが,ダスト(気象研が独自に同時採取の別の雪サンプルから測定したものを提供)及び有機炭素と吸光度の良好な関係も見出すことができ,黒色炭素以外のものと吸光度の関係まで議論でき,当初の目的以上の成果となった.(1)の大気側の研究では,本共同研究による低温研裏露場の小屋を使用し,小屋から大気フィルターサンプリングを随時行っており,現在も継続中である.これは,石英繊維フィルター上に捕集したECとダストの情報を電気炉で焼いた前後の吸光度の情報から取り出そうというもので,平成28年度公益信託エスペック地球環境研究・技術基金の助成金研究課題(代表者:安成哲平)の元で行われている.今年度は,サンプリングが主目的となっており,成果は来年度以降の予定である.(2)においては,昨年度上記小屋の外に設置したセンサーステーション(エアロゾルセンサー, AS, など)で特にAS測定の粒子個数濃度(0.3 μm以上と0.5 μm以上の2粒径レンジ)を使用した研究である.このASの常時モニタリングデータより2016年3月7日の粒子数濃度増加(0.5 μm以上の粒径レンジを使用)と他の観測・再解析データを使用することで,黄砂の判別をすることができ,この成果は,第57回大気環境学会年会(北大工学部,札幌)で発表され(Yasunari et al., 2016),NASA Goddard Space Flight Center(MD, USA)のClimate & Radiation Laboratory Seminar(2016年12月7日)でも紹介し(https://science.gsfc.nasa.gov/sed/calendar/showevent.cfm?CalID=3945),現在成果をまとめた論文を投稿中である(Yasunari et al., submitted). |
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成果となる論文・学会発表等 |
外崎友望(2017), 吸光度を用いた積雪中のブラックカーボン濃度の簡易的測定方法の検討に関する研究, 平成28年度北海道大学工学部環境社会工学科衛生環境工学コース卒業論文, 42 pp. Yasunari, T. J., Y. Fujiyoshi, M. Niwano, A. Shimizu, M. Hayasaki, T. Aoki, A. M. da Silva, B. N. Holben, N. Murao, S. Yamagata, and K.-M. Kim (2016), An identified Asian dust transport to Hokkaido in the spring of 2016(2016年春の北海道における黄砂と判断できた大気汚染イベント), 第57回大気環境学会年会, 札幌, 2016年9月. |