共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

フィブロイン-フィブリノゲン混合低温ゲルに関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 群馬大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 外山吉治

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

落合正則 北大低温研

研究目的 フィブロインは絹糸の70%を占める主要成分であり、フィブリノゲンは血液凝固における主要因子である。ともに生体適合性の良い物質であり、絹糸は医療縫合糸や人工血管、フィブリノゲンはフィブリン糊として外科手術時における組織接着剤として利用されている。これまで我々は、フィブリノゲン水溶液が4℃以下で低温ゲル(クライオゲル)を形成することを見出した。本研究では、フィブリノゲンおよびフィブロイン水溶液の低温度下での溶存挙動を詳しく調べ、フィブロイン-フィブリノゲン混合クライオゲルの形成について考察する。本年度は特にフィブリノゲンクライオゲル形成への尿素およびNaCl添加効果について調べた。
  
研究内容・成果 (1)尿素添加効果:
5.7 mg/mlフィブリノゲン水溶液液に尿素を50,100,150 mMを添加し、2℃におけるクライオゲルゲル形成にともなう濁度の経時変化を測定した。添加した尿素濃度の増加とともに濁度の上昇は抑制され、150 mMでは完全に阻害された。フィブリノゲンクライオゲル形成においては、トロンビン作用によるフィブリンゲル形成で支配的な”Aノブ-aホール”および”Bノブ-bホール”相互作用がない。高濃度の尿素添加によりクライオゲル形成が完全に阻害されたことから、尿素はフィブリノゲン分子間の隣り合うD領域同士の水素結合による相互作用を阻害したものと考えらる。

(2)NaCl添加効果:
5.7 mg/mlフィブリノゲン水溶液にNaClを90,120,150,180,200 mM添加し、2℃におけるクライオゲルゲル形成にともなう濁度の経時変化を測定した。添加したNaCl濃度の増加とともに濁度の上昇は抑制された。このことから、クライオゲル形成におけるイオン結合による相互作用の寄与が明らかとなった。

今後、低温下でのフィブロイン水溶液よおびフィブロイン-フィブリノゲン混合水溶液の溶存挙動について調べていく予定である。
  
成果となる論文・学会発表等 Toyama Y, Shimizu M, Ochiai M, Dobashi T. Effects of Urea and NaCl on the Fibrinogen Cryogelation, J.Biorheol. (in press).