共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

オホーツク海と相互に影響を及ぼしあうグローカル大気海洋諸現象
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 三重大学
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 立花義裕

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

植田宏昭 筑波大学 教授

2

吉川裕 京都大学 准教授

3

榎本剛 京都大学 准教授

4

三寺史夫 北大低温研

研究目的 オホーツク海の存在は,冬は海氷を通じ,夏はオホーツク海高気圧を通じ,日本の気候にきわめて重要である.オホーツク海が関連する研究の発展には,地球規模から小スケールの幅広い時空を対象として研究している気象学者と海洋物理学者とのコラボレーションが必要不可欠である.また研究のイノベーションはしばしば異分野交流から生まれる.研究組織として,気象学者と海洋物理学者で構成し共同研究を開始する.そしてオホーツク海を基軸とした全く新しい形の共同研究の萌芽やイノベーションを目指すことを,今年度の目標とした. また各々の研究者の指導学生を通じ,大学院生の興味を広げオホーツク海研究の裾野を広げることも目的とした.
  
研究内容・成果 各メンバー間で個別に数回の研究打ち合わせや研究についての議論を行い,新たな共同研究をインキュベートするためのアイデアを出し合った. その成果の一つが,日本気象学会における気象学者と海洋学者共同でのスペシャルセッションの立ち上げにつながった(メンバーの植田・立花・三寺他主催の「気候形成の統合的理解―気候科学における基礎研究の推進と地学・地理教育との連携―」). メンバー関係者らによって,「オホーツク海の存在が及ぼす梅雨強化メカニズム」 「チベット高気圧の形成と変動」 「海洋循環の西岸強化とロスビー波」 「大気循環に影響する北太平洋移行領域周辺の流動構造」 「オホーツク海高気圧再考と高校地学地理」の講演があった.この講演以外にも本スペシャルセッションに興味を持っていただいた多くの講演があった.このセッションについては,気象学会の元理事長からも絶賛の辞をいただいた.また,3月には次年度に向けて打ち合わせを兼ねたワークショップを行った.その中のいくつかのタイトルを以下に紹介する.「オホーツク海がもし陸だったら大気大循環はどうなる」「海洋表層の混合過程」「熱フラックスの日周変動が海面加熱期の海洋混合層に与える影響」「ENSOと冬季極東域の寒暖との関係」「南アジア高気圧の季節進行における非断熱加熱の寄与」「結合系『黒潮→台風⇔大気』がもたらす台風のUターン」「漂流ブイで観測された北太平洋移行領域の流動構造」「モンスーン・太平洋・インド洋結合系から見た日本の降水・降雪・台風の変動機構」「大気海洋陸面相互作用系から観た下記西アフリカモンスーンの季節進行」「シルクロードパターンと小笠原高気圧」「位相依存性のない擾乱エネルギー変換の表式とその応用」「渦と内部重力波の相互作用」「北太平洋の表層と中層をつなぐ子午面循環:特に表層の亜熱帯から亜寒帯への海水経路について」「ジュグジュル山脈が生み出すジェットが促進するオホーツク海氷拡大 〜海氷拡大はジュグジュルジェットを再強化する〜」等.特に,熱帯をバックグラウンドとした研究者と高緯度をバックグラウンドとした研究者間の白熱した議論は,通常の分野内での研究会や学会活動から得ることが出来ない貴重な機会であった.
ワークショップを含めたこれら一連の共同研究から,オホーツク海を基軸とした全く新しい形の共同研究の萌芽やイノベーションがなされた.また,ワークショップでは全国から多くの学生も参加し,研究者の裾野を広げることにも寄与した.
  
成果となる論文・学会発表等 Nishikawa H., Y. Tachibana, et al., Evidence for SST-forced anomalous winds revealed from simultaneous radiosonde launches from three ships across the Kuroshio Extension front, MWR, 144
Komatsu K. K. and Y. Tachibana, Two Types of Strong Local Wind Captured by Simultaneous Multiple-Site Radiosonde Soundings across a Mountain Range, MWR, 144
Hattori, T. Enomoto, et al, The impact of additional radiosonde observations on the analysis of disturbances in the South China Sea during VPREX2010. SOLA, 12
Kamae, H. Ueda et al, Robust cloud feedback over tropical land in a warming climate, JGR, 121
Ueda, H., et al., South-coast cyclone in Japan during El Niño-caused warm winters. Asia-Pacific, JAS, 53
Saiki, R., and H. Mitsudera: A Mechanism of Ice-Band Pattern Formation Caused by Resonant Interaction between Sea Ice and Internal Waves: A Theory. JPO, 46