共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

星間氷中のリン系分子の分光的性質の測定
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 東北大学
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 下西隆

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

渡部直樹 北大低温研 教授

2

羽馬哲也 北大低温研 助教

研究目的  窒素及び硫黄を含む分子ガスは、星間空間で普遍的に検出されている。星や惑星が形成される高密度分子雲内においては、大部分の分子ガスはダスト(星間塵)表面に吸着し、星間氷を生成する。しかし、窒素や硫黄を含む星間氷については、天文観測データとの比較に必要な氷の赤外線光学特性の実験データが不足しており、分子雲内での窒素系・硫黄系分子の存在形態は未だに謎に包まれている。本研究は、天文観測により得られるスペクトルデータとの正確な比較を行うため、実験室における星間氷模擬試料のスペクトル測定を行うことを目的としている。
  
研究内容・成果 本年度の研究では、星間氷中の存在が理論的に示唆されながら、未だ天文観測による検出がされていないNO及びH2Sについて、赤外線光学特性の測定を行った。これら二つの分子は、分子雲の化学進化モデル計算により、星間氷中での窒素又は硫黄系分子の有力な存在形態であることが示唆されており、天文観測データとの比較という観点から、これらの分子の光学特性の正確な測定が必要とされていた。測定実験においては、分子雲内での実際の存在状態を模擬するため、H2O又はCOとの混合氷を作成し、混合率及び温度を変えた複数パターンの氷試料の測定を行った。また、NO及びH2S単体でのスペクトル測定も行った。実際の星間空間の氷は、H2OやCOなどの存在比の高い分子種の中に特定の分子が混ざっている形で存在しており、また星間氷は分子雲の環境により異なる温度を持つ。よって、これらの様々な条件下でのスペクトル測定は、実際の天文スペクトルとの比較において重要な役割を果たす。
 実験の結果として、混合率・温度に応じた赤外線スペクトルの変化が確認され、各パターンにおけるスペクトルバンドの中心位置・幅が測定された。ここで得られたデータは、天文観測データから星間氷中の分子の同定を行う上で不可欠な基礎データである。今後は、本年度の研究により得られた実験データを元に、天文観測スペクトルの解析を行っていく。また、H2S及びNOを定量的に探るための新たな天文観測の提案にも発展させていく。
 なお、当初の研究課題として提案していたリン系分子の分光的性質の測定に関しては、PH3ガスの使用において厳重な管理体制が必要であることが判明したため、今年度はまず既存の装置で可能なリンを含む氷の実験手法に関する検討を行った。ここでの検討内容は次年度以降の研究へ反映される。
  
成果となる論文・学会発表等