共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
CYO1遺伝子高発現による植物のStay-green化の解析 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 広島大学大学院理学研究科 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 島田裕士 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
堀川大輔 | 広島大学大学院理学研究科 | 修士課程1年 |
2 |
冨永淳 | 広島大学大学院理学研究科 | 博士研究員(PD) |
3 |
田中歩 | 北大低温研 |
研究目的 | 子葉特異的に発現するシロイヌナズナCYO1遺伝子のノックアウト変異体は子葉のみがアルビノの表現型を示す。CYO1タンパク質はタンパク質のシステイン残基間で形成されるジスルフィド結合の架け替えを行う Protein disulfide isomerase (PDI) 活性を有している。野生型ではクロロフィルの減少が観察される連続暗黒条件下において,CYO1遺伝子をCaMV 35S promoterによって植物体全体で高発現させたCYO1高発現体はクロロフィル減少が遅れるStay-greenの表現型を示すようになる。本研究ではCYO1の高発現によるStay-green化のメカニズム解明を目的とする。 |
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研究内容・成果 | 本研究ではStay green表現型を示すシロイヌナズナのCYO1高発現体(AtCYO1ox)の詳細な生理・生化学的解析を行った。まず,暗黒処理を行った葉の葉緑体構造を観察したところ,AtCYO1oxでは葉緑体構造が維持されていた。次に,AtCYO1oxでは暗黒処理によるChlorophyll量の減少が野生型シロイヌナズナ(WT)に対して緩和されたことから,暗黒処理によるChlorophyll代謝中間体の蓄積量変化を調べたところ,Chlorophyll分解産物Pheophytin a (Phein a)の蓄積量はWTに比べて多く,Chlorophyll bからChlorophyll aに変換される反応の中間体である7-Hydroxymethyl chlorophyll a (HM Chl)やPhein a分解産物Pheophorbide a (Pheide a)の蓄積量はWTに比べて少なかった。このことから,AtCYO1oxではAtCYO1のPDR活性によりChlorophyll分解系酵素の機能が抑制されていることが示唆された。次に,暗黒処理による光合成関連遺伝子のタンパク質・mRNA量変化を調べた結果,Rubiscoの大サブユニットタンパク質や光化学系(PSIとPSII)の反応中心サブユニットのタンパク質・mRNA量の減少がAtCYO1oxではWTに対して緩和されていた。このことからPSI,PSIIの反応中心やその他の光化学系の膜タンパク質の維持にAtCYO1の高発現が関与していることが示唆された。さらに,野生型シロイヌナズナの子葉において,AtCYO1はPSI,PSIIコンプレックスと相互作用していることが報告されている。AtCYO1oxのロゼット葉においてPSIの反応中心の暗黒処理による酸化還元状態変化を調べたが,今回の実験では判別できなかった。暗黒処理による光合成関連遺伝子のタンパク質・mRNA量変化の結果から,AtCYO1のPDR活性によって標的タンパク質を還元状態に維持することでそのタンパク質の分解を抑えていることが考えられる。 |
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成果となる論文・学会発表等 | 堀川大輔,冨永淳,中原恭俊,近藤真紀,亀井保博,田中歩,坂本敦,島田裕士,Protein disulfide isomeraseの高発現により惹起される葉のStay green表現型,第58回日本植物生理学会年会(鹿児島大学,2017年3月18日) |