共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

湿地の永久凍土変動が溶存鉄生成量に及ぼす影響の実験的評価
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 岐阜大学応用生物科学部
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 大西健夫

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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白岩孝行 北大低温研

研究目的 アムール川から供給される溶存鉄はオホーツク海の生物生産に寄与していると考えられている。1990年代後半に、アムール川流域において溶存鉄生成量の大きなピークが見られ要因は明らかになっていない。しかし、長期の測定データと数値シミュレーションから、「永久凍土の融解が溶存鉄生成量に影響を及ぼしている」という仮説が有力である。そこで本研究では、永久凍土の融解、および季節的な凍結融解過程が、溶存鉄生成量に及ぼす影響を実験的に検討することを目的とし、鉛直一次元の凍結融解カラム実験により定量的に評価する。
  
研究内容・成果 本研究においては、「鉛直一次元の凍結融解カラム実験」にもとづき、永久凍土地帯における凍結面の低下と凍結融解過程が溶存鉄生成量に及ぼす影響を評価することが目的である。そのため北海道大学低温科学研究所の例温室を使用しての本実験に先立ち、研究代表者の所属する岐阜大学にて予備実験を行った。予備実験のために、50cm長のアクリル製カラムを作成した。このカラムを用いて、固定カラム長・下端未凍結での凍結融解実験を実施した。これは、永久凍土面が存在しない条件下での凍結融解実験に相当する。50cm長のカラムにて、下端には冷媒を循環させず、適宜、適切な温度を試行錯誤にて調整したのち、-5℃の温度環境下において、TDRの値と土壌温度により土壌の凍結状態をモニタリングしながら、「凍結過程」を進めた。カラム全体が凍結したことを確認後、0℃の冷蔵庫の中で、上端に温度調整をした不凍液を循環させて上端温度を制御しながら「融解過程」を進めた。実験期間中には、定期的(1 週間に一回程度)に土壌水および土壌サンプル(5mg 程度)を採取し、各種、分析を行った。測定項目は、土壌水分量、土壌温度、主要なアニオン・カチオン濃度(現有のイオンクロマトグラフィー)、溶存全鉄濃度および溶存2価鉄濃度、有機物含量、酸化還元電位、鉄還元細菌および酸化細菌の微生物群叢、である。また溶存2価鉄は酸素と速やかに反応して3価鉄に形態変化をするため、フェナントロリン添加による比色法による現場測定をあわせて行った。その結果、土壌の凍結と融解を概ね再現させることができた。しかし、融解過程の制御については、不安定になるため課題が残された。また、融解過程において土壌中の酸化還元電位の低下が認められた。しかし、溶存全鉄濃度の低下は予想に反して大きな変化が見られなかった半面、硝酸態窒素濃度には低下がみられた。土壌中の還元状態の進行が溶存鉄が生成されるほどには進行しなかったことが原因と考えられる。そこで、さらに予備実験を重ねることにより、おおむねカラムの凍結・融解を制御することが可能となった。当初の予定に反して、これら予備実験に多くの時間を要したため、北海道大学例温室を用いての本研究を進めることはできなかった。しかし、概ね予備実験にて制御法が確認できたため、研究分担研究者である白岩とともに、北海道大学低温科学研究所の例温室にて今後実施していきたいと考えている本実験の構成を構想し、予備的に例温室の稼働させて確認した。また、実際の湿地土壌を用いて実験をすることが望ましいため、北海道の湿地土壌選定もあわせて行った。
  
成果となる論文・学会発表等