共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

吹雪の高密度観測による時空間構造の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 名古屋大学大学院環境学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 西村浩一

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

下山宏 北大低温研

研究目的  既存の吹雪モデルはいずれも定常状態を対象としているが、吹雪の発生と発達を厳密に議論するうえでは、乱流のsweepやejectionなどの組織構造との関連の理解が不可欠である。実際に道路上での視程障害が起因した交通事故も、吹雪の強さそのものより時間的空間的な変動が強く関与しているとの報告もある。こうした背景のもと、本研究では、吹雪の時空間構造の解明に向けて高密度の計測を展開することに加え、吹雪の時空間変動を組み込んだ固気混相LESモデル(LES: Large Eddy Simulation)を開発することを目的とする。
  
研究内容・成果  国内の関係諸機関に呼びかけて、16台のSPC(スノーパーティクルカウンター)を準備し、これらとほぼ同等の数の超音波風向風速計(15台)とともに、国立研究開発法人土木研究所寒地土木研究所の石狩吹雪実験場(北海道石狩市)の試験領域に設置した。今年度は、凍結乱流の仮定に基づき、主風向に対して直角方向に約1 m間隔で配置し、雪面からの高さを随時変化させて、吹雪の高密度観測を2017年の1月から2月にかけて、冬型の気圧配置が強まった期間に延べ約10日間にわたり実施した。なお、SPCは通常吹雪フラックスと粒径分布を1秒間隔で記録するが、今回はセンサーからの出力を直接100kHzという高周波サンプリングすることで、質量フラックスと粒径に加え、粒子速度の変動を高時間分解能で測定した。現在、吹雪粒子密度や速度やフラックスとそれらの間欠性や微細な乱流構造との関係に着目して解析が進められている。周波数解析に加え、水平と鉛直方向の変動風速をそれらの符号により分類する四象限解析により瞬時の乱流輸送イベントである低速・上昇流ejectionや高速・下降流sweepが発生する際の気流場の解析が行われている。乱流境界層においては、正味の運動量は下向きに輸送され、その内訳として第2象限となる低速・上昇流ejection、第4象限となる高速・下降流sweepの乱流イベントが卓越することが示されているが、本研究でも瞬時気流場に対する4象限解析により、吹雪層内部でのejection及びsweep現象の全運動量輸送に対する寄与率の定量的評価を試みる予定である。
 一方、乱流(風)と吹雪粒子の運動をカップリングさせた固気混相LESモデルに関しては、アルゴリズムの開発と精緻化を進めプロトタイプが完成し、実測値との比較検討が進められている。
  
成果となる論文・学会発表等