共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
千島系・樺太系グイマツの系統的ルーツの解明 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 道総研・林業試験場 |
研究代表者/職名 | 研究職員 |
研究代表者/氏名 | 石塚航 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
原登志彦 | 北大低温研 | |
2 |
小野清美 | 北大低温研 | |
3 |
田畑あずさ | 北大低温研 |
研究目的 | 北海道において、北方系針葉樹の1種グイマツ(カラマツ属)は地域絶滅しているが、林業用樹木としての価値が高いため、過去に北方諸島の分布域より北海道に持ち込んだ優良なグイマツが育成されて、種苗配布用の母樹として用いられている。今後のカラマツ属種苗の需要増加を見越して、グイマツの育種も求められているものの、グイマツの正確な由来、とくに系統情報が欠落しているために遺伝的評価ができていない。H28年度の共同研究では、北海道に植栽されているグイマツ複数家系から葉緑体DNAを抽出し、詳細な遺伝子配列解析を行うことを目的とする。 |
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研究内容・成果 | まず、純粋な葉緑体のみのDNAを単離・抽出した。実験にあたっては、針葉樹において確立された新たな手法(do Nascimento Vieira et al., 2014)をグイマツにて応用し、20gの生葉から十分量のDNAを抽出できるようプロトコルを最適化させた。この手法を用いて複数家系から葉緑体DNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて塩基配列の解読を行った。得られた配列のde novo アッセンブリによって、十分な配列量(ゲノム×6000)からなる、環状構造のグイマツ葉緑体の完全長ゲノム配列を構築することができた。 なお、ゲノムサイズは家系によって122,553〜122,598塩基対とばらつきがあり、家系間に19ヶ所の変異が見つかった。これらの情報を用いて、ハプロタイプネットワークや系統樹を推定し、形質と遺伝子型との関連解析を行った。その結果、これまで推定されてきた千島・樺太由来の2群の存在や、既に指摘されている群間のフェノロジー差異を認めることができた一方で、2群間の分化の程度が浅く、フェノロジーも完全分離しないことや、千島・樺太の両系統に属さない未知の系統も検出されたことが新たにわかった。 これらの知見は、森林遺伝育種学会、ならびに、日本生態学会において発表した。また、葉緑体DNA単離から配列解読までのパイプラインが確立したので、さらに解析材料を追加することが可能となった。そこで今後は、解析に供する家系や近縁種を増やして同様の葉緑体ゲノム比較解析を行うことで、グイマツの系統的ルーツの推定を試みる。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
石塚航・田畑あずさ・小野清美・福田陽子・原登志彦 (2017) 地理的隔離する北方樹木グイマツ2系統の復元―ゲノム情報を用いて, 日本生態学会, P2-O-421, 早稲田大学 東京. 石塚航・田畑あずさ・小野清美・福田陽子・原登志彦 (2016) グイマツ葉緑体の完全長ゲノム配列の解読と構造変異の推定, 森林遺伝育種学会第5回大会, P-05, 東京大学 東京. |