共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

衛星系研究会
新規・継続の別 継続(平成26年度から)
研究代表者/所属 産業医科大学医学部
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 谷川享行

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

栗田 敬 東大地震研 教授

2

寅丸 敦志 九大理 教授

3

土屋 史紀 東北大 助教

4

木村 智樹 理研 研究員

5

倉本圭 北大理 教授

6

大槻圭史 神戸大理 教授

7

田中秀和 北大低温研 准教授

8

木村淳 東工大ELSI 研究員

9

関根康人 東大理 准教授

10

鎌田 俊一 北大理 助教

11

平田 直之 神戸大理 研究員

12

末次 竜 神戸大理 助教

13

樋口 有理可 東工大地惑 研究員

14

野口 里奈 東大地震研 大学院生

15

依田 優大 東大地震研 大学院生

16

古賀 亮一 東北大理 大学院生

17

田中 今日子 北大低温研 研究員

18

金川 和弘 北大低温研 研究員

19

三上 峻 北大理 大学院生

研究集会開催期間 平成 27 年 7 月 21 日 〜 平成 27 年 7 月 22 日
研究目的 外惑星の衛星(木星衛星のイオ,土星衛星のエウロパ,エンケラドゥス)で発見されているvolcanism(噴火・噴出現象)は,その衛星系特有のコンパクトな軌道に起因する潮汐加熱が存在するため,普遍的に存在しうることが分かってきた.しかし衛星系の volcanism は,地球でのそれと比べ化学的・物理的特徴およびその規模など様々な面で異なっているため,その理解は現時点では極めて限定的である.そこで本研究会では,まず衛星におけるvolcanismを横断的に概観し,地球のそれと比較しつつ特徴を整理し理解を深めることで,volcanismから衛星系形成の起源に迫るための糸口を探ることを目的とする.
  
研究内容・成果 衛星の volcanism を鍵にして,4 名の招待講演者にそれぞれの専門領域についてレビューを行って頂いた.

まず,衛星系における volcanism や衛星熱進化の熱源として鍵となる,惑星と衛星の潮汐相互作用の理論について,東大地震研の栗田敬氏にご講演頂いた.潮汐相互作用は力学的に古くから考えられている問題であり,その基礎的部分から,例えば軌道進化とカップルした潮汐熱進化についての最新の話題までわかりやすいレビューを行って頂いた.

次に,地球上における噴火現象について,九大の寅丸敦志氏にレビューをして頂いた.地球については当然ながら詳細な観測例がたくさんあるため,今回は主にそれらをどのように分類するとわかりやすいかについてお話し頂いた.出席者の多くは惑星科学や天文が専門のため,地球上における噴火現象についてのこのような基礎的なレビューは大変役に立ったのではないかと思われる.また,間欠泉のメカニズムについての興味深い模擬実験もお見せ頂き,衛星における間欠泉との関連性についても議論がなされた.

2013 年に打ち上げられ,現在エキサイティングな結果を提供し続けている惑星分光観測衛星「ひさき(SPRINT-A)」の成果について,東北大学の土屋史紀氏と理研の木村智樹氏にそれぞれの立場からご講演頂いた.今回は,詳細に観測が行われているイオ・プラズマトーラスについての最新の結果を中心にお話し頂いた.イオ火山から噴出した物質の一部は衛星重力圏を脱出し,イオ軌道付近にトーラス状のプラズマ領域を作り,ひさき衛星はこの領域を重点的に観測しているわけだが,今回のお二人のお話から,このプラズマトーラスの観測を通じて現在のイオ火山についての情報が多く得られることを実感した.

イオやエンケラドゥスに代表される衛星からの噴出現象,およびそれらが重力圏を脱出して衛星軌道上などに形成するより大きな構造の観測を通じて,これまで主に理論的に考えるしかなかった衛星の軌道進化・衛星の内部熱進化という問題が,実証可能になりつつあることを実感させられた.さらに,我々の良く理解している地球における噴火現象からの外挿を効かせつつ研究を進めることの重要性も認識できた.また,一般講演・ポスター講演も,(個別に触れることはしないが)今回のテーマに直接的に関係するしないにかかわらず,招待講演の内容の間をつなぐものもたくさんあり,充実したものだった.

研究会プログラムおよび講演資料は,以下の URL で公開している.
https://www.cps-jp.org/~satellite/index2015.html
  
研究集会参加人数 34 人