共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

惑星形成環境における惑星材料物質としての氷微粒子の成長・移動過程
新規・継続の別 継続(平成23年度から)
研究代表者/所属 千葉工業大学惑星探査研究センター
研究代表者/職名 上席研究員
研究代表者/氏名 和田浩二

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

小林浩 名古屋大学大学院理学研究科 助教

2

奥住聡 東京工業大学大学院理工学研究科 准教授

3

谷川享行 産業医科大学医学部 助教

4

玄田英典 東京工業大学地球生命研究所 特任准教授

5

村川幸史 大阪産業大学 非常勤講師

6

田崎亮 京大理学研究科宇宙物理学専攻 大学院生(博士1年)

7

田中秀和 北大低温研 准教授

8

金川和弘 北大低温研 博士研究員

研究目的 惑星形成第1段階は固体微粒子(ダスト)の合体成長過程である.ダスト粒子からkmサイズの微惑星天体形成に至るまでの過程には、未だ多くの不定性が残されている. 惑星形成領域内を天体材料物質である氷ダスト粒子が大規模に移動することも指摘されており、その解明が惑星形成論において重要課題となっている。我々のグループは、この3年間で微粒子衝突における合体成長現象や星周ガス円盤内での氷ダスト粒子分布進化を解明し、微惑星天体の新たな形成過程を提唱してきた。本研究では、惑星形成現場である原始惑星系円盤における氷ダストの成長・移動・破壊の理論モデルを構築し、天文観測との比較により検証可能な輻射モデルも併せて作成する。
  
研究内容・成果 今年度は、作年度に引き続き、氷微粒子成長・移動過程の理論モデルの発展・精密化と、天文観測との比較のための円盤内氷微粒子からの輻射モデル構築も並行して進める。具体的には次の3つの研究を行った.

1. [天体衝突破壊・合体を記述する統合モデル構築]
合体成長段階にあるダスト粒子はサブミクロン微粒子の集合体である.一方kmサイズ以上の始源天体は、イトカワのような瓦礫が集積したラッブルパイル天体だと予想されている。これらミクロンサイズから天体サイズまでの衝突破壊・合体過程を各種の衝突数値シミュレーションによって調べてきた。今年度は、衝突速度、衝突天体質量、衝突角度などのパラメータを変えて、多数の数値計算を行い、破壊により放出される質量を調べ、それに関する経験式を得た。その結果、ダスト衝突の結果と合わせて天体衝突破壊統合モデルをほぼ完成できた。これについて1つの論文を発表し、現在もう1つ論文を執筆中である。

2. [氷ダストの移動過程を考慮した巨大惑星を含む円盤輻射モデルの作成]
巨大惑星による円盤ガスの流れの変化により、ダスト粒子移動が阻害されたりダスト粒子分布は影響を受ける.このような惑星の効果をモデル化し、観測された原始惑星系円盤のギャップ構造との比較を行った.その結果、惑星がダスト円盤に作るギャップの幅から惑星質量を読み取る方法を提唱した。この方法は、ギャップの深さを用いた方法に比べ惑星質量を正確に測定することができる。さらに、ALMAにより観測されたHL Tau の円盤ギャップ構造に我々の方法を応用し、木星質量程度の惑星がそのに存在することを予言した。以上の結果は4本の論文にまとめられた。

3. [高空隙率氷微粒子の光学的性質モデルを用いた円盤輻射モデルの作成]
原始惑星系円盤の進化や惑星形成過程において、固体微粒子(ダスト)のサイズや構造は非常に重要な要素である。我々の研究により、氷ダスト粒子は合体成長過程を通じ、高空隙率をもつ構造に進化することが明らかにされてきた。このような高空隙率氷微粒子の光吸収係数と散乱係数を明らかにした上で、これらを用いて円盤内の輻射計算を行うことで、天文観測と比較可能な円盤輻射モデルの構築を行った。特に、原始惑星系円盤の散乱光に関しては、ダスト散乱を精度よく扱えるレーリーガンツモデルを発展させることにより中心星輻射散乱モデルを構築した。これにより、高い反射能をもつ原始惑星系円盤は高空隙率のダストアグリゲイトにより説明できることを示した。さらに、ダスト成長に伴う円盤輻射場の進化を調べ、最近電波で観測されたHLTauの円盤のような軸対称のリング構造がダスト成長の結果普遍的につくられることを示した。以上の結果に関して1つ論文を投稿し、2つについて現在論文執筆中である。
  
成果となる論文・学会発表等 K.D. Kanagawa, T. Muto, H. Tanaka, et al. Mass Estimates of a Giant Planet in a Protoplanetary Disk from the Gap Structures, Astrophysical Journal Letters. 806, L15. 2015
M. Momose, H. Tanaka(11th author), et al. Detailed structure of the outer disk around HD 169142 with polarized light in H-band, PASJ. 67, 83:16pp. 2015
H. Genda, T. Fujita, H. Kobayashi, H. Tanaka, Y. Abe, Resolution Dependence of Disruptive Collisions between Planetesimals in the Gravity Regime, Icarus. 262, 58-66. 2015
K.D. Kanagawa, T. Muto, H. Tanaka, et al. Mass constraints for a planet in a protoplanetary disk from the gap width, PASJ. 印刷中. 2016
S. Okuzumi, et al. Sintering-induced Dust Ring Formation in Protoplanetary Disks: Application to the HL Tau Disk, Astrophysical Journal. 印刷中. 2016
H. Kobayashi, H. Tanaka, S. Okuzumi, From Planetesimals to Planets in Turbulent Protoplanetary Disks I. Onset of Runaway Growth, Astrophysical Journal. 印刷中. 2016