共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 ASTE望遠鏡搭載用ミリ波・サブミリ波帯連続波カメラ光学系の開発
新規・継続の別 継続（平成22年度から）
研究代表者／所属 国立天文台チリ観測所
研究代表者／職名 特任研究員
研究代表者／氏名 竹腰達哉

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 大島泰 国立天文台先端技術センター 助教

2

 石井峻 東京大学天文学教育センター 特任助教

3

 松尾宏 国立天文台先端技術センター 准教授

4

 南谷哲宏 国立天文台野辺山宇宙電波観測所 助教

5

 香内晃 北大低温研 教授

6

 中坪俊一 北大低温研 技術専門職員

7

 森章一 北大低温研 技術専門職員

研究目的 連続波カメラを用いたミリ波・サブミリ波帯の超広帯域・広視野連続波観測は、星間ダストの熱放射を通して宇宙初期の爆発的星形成銀河や銀河系内・近傍銀河中の星・惑星形成領域を効率よくトレースし、その形成メカニズムや物理状態を推定する上で最適な観測手法である。我々は、チリ・アタカマ砂漠の標高4800mに設置されているASTE望遠鏡に搭載するためのミリ波・サブミリ波帯多色連続波カメラの開発を進めており、ミリ波・サブミリ波帯の観測を地上から効率良く行うための本格的な連続波観測装置を実現することを目指している。
試験観測で得られたNGC6334Iの画像。(1) 波長1.1mm， (2) 0.85mm.　カメラ試験デュアの前に設置されたフィルターホイール機構。　ニオブを加工して作ったインダクタウェハーモジュール。
研究内容・成果 　我々は平成22年度より、低温科学研究所装置開発室の協力のもと、特に主要な開発項目であるASTEに適合した広視野光学系や多色を実現するコンパクトな冷却光学系、そして極低温 (250mK)までの冷却が必要な検出器のサポート機構の製作を行うなど、連続波カメラのASTEでの運用に向けた開発的研究を推進している。平成26年4月のチリ現地での試験観測では、銀河系内の活発な大質量星形成領域であるNGC6334Iの波長1.1ミリおよび850ミクロン帯での同時撮像観測（図1）に成功するなど、本格的な科学観測に向けた準備が整いつつあり、本格運用に向けてさらなる改良を進めている。
　平成27年度においては、チリ現地での試験観測で見つかった問題点を解決するための改修を行った。第一に、連続波観測においては検出器の較正手法が十分確立しておらず、測定精度の大きな不定性の要因となっている。そのため、新たに様々な大気透過率に相当する黒体を検出器に見せるためのフィルターホイール型の装置を開発し、その設計および製作を低温研装置開発室と協力して行った（図2）。動作試験や検出器と組み合わせての試験も行い、設計通りの性能を得られており、平成28年4月のチリ現地でのコミッショニング観測時に最終的な評価試験と較正手法の確立を目指す予定である。
　第二に、チリ現地での観測データを解析した結果、望遠鏡の駆動時に極低温検出器部の温度上昇がみられた。この問題の解決のため、構造シミュレーションを用いて極低温部の振動の原因がサポート部の強度不足であることを明らかにし、極低温の構造材であるVESPELの梁の本数を増やすとともに、局所的に太い梁を用いることで、構造を大幅に強化した。こちらも次の現地セッションにおいて、その評価が行われる予定である。
　第三に、検出器の読み出し回路の歩留りが低いという問題があり、その問題の解決のため大幅な焦点面モジュールの改良を行った。新たに製作したインダクターアレイウエハーを実装するためのサポート治具の製作等を行い（図3）、これまで60%程度であった歩留りが90%以上に改善した。
　以上が連続波カメラの本格的な運用に向けた改良項目である。これらの現地での最終試験は低温科学研究所の中坪氏らとともに、平成28年3-7月に行う計画である。
　その他に、平成27年度においては、連続波カメラと相補的な観測機器である超伝導直接検出器を用いた超広帯域分光装置DESHIMAを、カメラと同時に搭載することを検討し、必要なミラー等光学素子を製作する計画であったが、現在、必要な光学系の設計を行っている段階であり、来年度以降に本格的な光学系の製作を行う予定である。
試験観測で得られたNGC6334Iの画像。(1) 波長1.1mm， (2) 0.85mm.　カメラ試験デュアの前に設置されたフィルターホイール機構。　ニオブを加工して作ったインダクタウェハーモジュール。
成果となる論文・学会発表等 大島泰（国立天文台）ほか、「ASTE 搭載用多色連続波カメラの開発（4）：科学運用に向けた開発」、日本天文学会春季年会、2015年3月