共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 雪氷中鉱物粒子濃度と雪面アルベドの関係
新規・継続の別 継続（平成26年度から）
研究代表者／所属 山形大学理学部
研究代表者／職名 教授
研究代表者／氏名 鈴木利孝

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 飯塚芳徳 北大低温研 助教

2

 的場澄人 北大低温研 助教

研究目的 氷河の後退や海氷面積の減少など、雪氷圏の衰退が懸念されている。雪氷が急激に融解する原因として、地球温暖化による気温上昇の他、人間活動起源の不純物や砂漠化による風送塵の増加による雪氷汚染に伴う雪面の反射率（雪面アルベド）の減少が注目されている。しかしながら、雪氷に負荷される鉱物粒子と雪面アルベドの関係を定量的に解析している研究例は見あたらない。そこで本研究では、（1）山形県の積雪地において雪面アルベドと積雪中鉱物粒子量の同時測定を行い、両者の関連性を明らかにすること、（2）北半球雪氷コアに記録された鉱物粒子量の鉛直分布を測定し、北半球氷河上での過去のアルベド変化を復元することを目的とした。
　　
研究内容・成果 2014〜2015年の冬季、山形市、蔵王、西川町等の山形県内各地においてアルベドメーターおよび可搬型スペクトロメーターによる雪面アルベド測定と積雪採取の同時観測を行った。積雪試料は融解後、一部の試料を用いて濁度計により濁度を測定し、残りの試料はマイクロ波酸分解法により雪中粒状物を全分解した後、ICP発光分析を用いて雪中金属成分全濃度（溶存態+粒子態）を測定した。
雪中濁度が高いほど雪面アルベドは低くなり、両者は寄与率76%の強い相関関係で対数回帰（y=-0.086ln(x)+0.82）することができた。また、雪中FeおよびAl全濃度と雪面アルベドの関係も、それぞれ75%、67%の高い寄与率で対数式（y=-0.073ln(x)+0.58、 y=-0.083ln(x)+0.65）によりモデル化することができた。FeとAlの濃度比は約0.75と一定値を示し、この値は平均鉱物粒子組成比に近いため、雪面アルベドは雪に含まれる鉱物粒子量と強い相関性があると考えられる。雪中Na全濃度と雪面アルベドとの間には有意の相関は見られず、これは、Na全濃度に対して海塩性・可溶性Na濃度が大きく寄与したためであり、雪中にイオンとして含まれる金属はアルベドと無関係であることがわかった。可搬型スペクトロメーターによるアルベドと雪中金属濃度の地理変化等は現在解析中であるが、雪中成分濃度が同じ雪面でも、光の波長領域によりアルベドに強弱が生じることがわかっている。
今後、可搬型スペクトロメーターによる成果の詳細解析をはじめ、極地や中緯度氷河から採取した雪氷コア中の濁度や金属成分濃度を測定し、雪中濁度・金属成分濃度と雪面アルベドの回帰モデルを用いて、過去の雪面アルベド変化の復元を試みる予定である。
　　
成果となる論文・学会発表等 鈴木利孝， 2015グリーンランド南東ドームコアの金属成分解析， 2015グリーンランド南東ドームコア研究シンポジウム， 北海道大学低温科学研究所， 札幌， 2015.
飯塚芳徳，的場澄人，大藪幾美，山崎哲秀，門田萌，新堀邦夫，青木輝夫，斉藤健，宮本淳，古川峻仁，藤田秀二，堀彰，山口悟，大野浩，鈴木利孝，植村立，関宰，本山秀明， グリーンランド南東ドームにおける浅層掘削計画-掘削報告と初期コア解析-， 2015年度雪氷研究大会， 信州大学， 松本， 2015.
小室悠紀， 鈴木利孝， 平林幹啓， 大沼友貴彦， 箕輪昌紘， 山崎哲秀， 的場澄人， 藤田耕史， 本山秀明， 青木輝夫， グリーンランドSIGMA-D浅層氷コアの金属全濃度解析， 2015年度雪氷研究大会， 信州大学， 松本， 2015.
小室悠紀， 油井綾， 鈴木利孝， 大沼友貴彦， 箕輪昌紘， 山崎哲秀， 的場澄人， 藤田耕史， 本山秀明， 青木輝夫， グリーンランド北西部SIGMA-D浅層氷コアの金属全濃度解析-現在の解析状況と今後の予定， 科研費基盤（S）「北極域における積雪汚染と雪氷微生物が温暖化に及ぼす影響」に関する第5回ワークショップ， 山田交流促進センター， 富山， 2015.