共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

無菌的に融解水とガスを分離・採取する装置の開発
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 国立極地研究所 新領域融合研究センター
研究代表者/職名 特任助教
研究代表者/氏名 瀬川高弘

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

福井学 北大低温研

2

的場澄人 北大低温研

3

新堀邦夫 北大低温研

研究目的  メタンは強力な温室効果ガスであり、永久凍土、湖沼および湿地が主な自然発生源である。極域氷床コアや凍結湖沼表面氷にはメタンガスが封じ込められており、過去の環境復元や現在の生態系解析において重要な情報を供給する。しかし、低温環境下においてもメタンの生成及び消費は微生物によって行なわれる可能性があり、氷中の微生物とメタンの同時解析が必要とされる。そこで、本共同研究では、無菌氷床融解ガス分離装置の開発を目的とする。
  
研究内容・成果  最終目標は、グリーンランドや南極氷床掘削現場で利用可能な携帯型分離装置の開発であるが、本年度はメタンガスを高濃度に含む湖沼表面氷から無菌的に凍結水を融解し、水とガス成分を分離し、それぞれを分取可能な試作品を開発することとした。すでに低温科学研究所技術部で開発した無菌氷床融解装置を基に改良を重ね、外部からの混入の無いガス分離部を新規に開発し、実際の湖沼氷に応用を試みた。外部からのガス成分の混入のチェックはガスクロマトグラフィーで、微生物の混入はDNA解析によって行なった。
 融解装置の構成は、無菌的氷融解部、融解水ーガス分離部、ガス分析用採取部および融解水分析採取部である。標準ガスを含んだ人口氷では融解水とガス成分の分離に成功した。
 さらに改良を加え、氷点下の現場環境で使用可能な仕様とした。融解水の再凍結を防止するために、融解水抽出チューブの電熱被覆を施し、氷点下20℃でも稼働することを確認した。
 実試験として、2016年2月に釧路市春採湖より採取した凍結湖水氷を用いて行なった。その結果、融解水は得られるもののガス成分を抽出することが困難であった。その原因は、湖水氷に内包されているガス泡が大きなサイズにより融解水ーガス分離部のガス圧が低下し、装置外へのガスが漏出するためである。今後、大きなガス泡が含まれている氷にも適用可能な装置を開発する必要がある。
  
成果となる論文・学会発表等