共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

超濃厚水溶液中からのタンパク質結晶の成長について
新規・継続の別 継続(平成26年度から)
研究代表者/所属 金沢大学総合メディア基盤センター
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 佐藤正英

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

鈴木良尚 徳島大ソシオテクノ研究部 准教授

2

勝野弘康 立命館大学理工学部 助教

3

佐崎元 北大低温研 教授

研究目的 最近,本研究グループの鈴木は,遠心透析と濃縮によりニワトリ卵白リゾチーム(HEW)の水溶液の液液相分離および相分離後の超濃厚溶液相の出現,およびそこからのHEW結晶の核生成および結晶成長を確認している。
これにより,理解が不十分であった濃厚環境相からの結晶成長現象の一般的な理解の足がかりになり,水の果たす役割も明確になることが期待される。
そこで,鈴木の実験を念頭に置き,代表者である佐藤が分担者の勝野とともに計算機シミュレーションを行い,計算機実験的な観点から素過程の解明を行う。また,分担者の鈴木は,貴研究所の佐崎教授と共同して出現が確認された濃厚相からの結晶成長の素過程の観察を行う。
  
研究内容・成果 鈴木は遠心透析と濃縮によりニワトリ卵白リゾチーム(HEW)の水溶液の液液相分離を行い,沈殿剤フリーで濃厚液体相からのHEWの結晶の作成に成功した。
得られた結晶の構造を行い,沈殿剤を添加して得られた結晶との構造の比較を行った。構造解析からは,一見すると構造の大きな差は見られたなった。しかし,より詳細な検討を今後行う必要がある。
また,他の物質についても沈殿剤フリーで同様の結果が得られた。どの様な物質については同様の手法が使えるのかを明確にすることができれば,結晶成長現象に対して新たな知見が得られると考えている。

計算機シミュレーションでは斥力系の遠心沈降によるコロイド結晶成長のシミュレーションを行った。逆ピラミッド型の容器内に沈殿させて,形成される結晶が容器の形状や外力の方向にどのように依存するかを調べた。形成される結晶は外力の報告にはあまり影響を受けないが,容器形状には大きな影響を受けた。
また,シミュレーションでは結晶化は壁面から起きることも確認された。沈殿剤フリーで濃厚液体相からのHEWの結晶の作成では,必ずしも壁面からの成長が起きているわけではない。したがって,実験と本モデルの間にはまだ乖離する点が見受けられることが分かった。
  
成果となる論文・学会発表等 鈴木良尚, 真板宣夫, 「沈殿剤フリーで濃厚液体相からのHEWの結晶の作成」日本物理学会第71回年会 講演番号21aBE-2

Youhei Kanatsu and Masahide Sato, Removal of defects in a colloidal crystal grown in an inverted pyramidal container by change in the external force, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 54 no.11, Aarticle ID 110301 pp.1-4 (2015).

Youhei Kanatsu and Masahide Sato, Dependence of the apex angle of an inverted pyramidal shaped container on crystallization of Brownian particles, J. Phys. Soc. Jpn., Vol.84, No.11, Article ID: 114601 pp. 1-5 (2015).

Masahide Sato, Muhammad Yusuf Hakim Widianto, Youhei Kanatsu, Dependence of crystallization of Brownian particles by sedimentation on the force direction and container shape, Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 54 no.11, Aarticle ID 115503 pp.1-4 (2015)