共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

耕地生態系における大気-植生-地表面間の熱・水・物質輸送に関する研究
新規・継続の別 継続(平成25年度から)
研究代表者/所属 農業・食品産業技術総合研究機構
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 丸山篤志

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

桑形恒男 独立行政法人農業環境技術研究所 上席研究員

2

小野圭介 独立行政法人農業環境技術研究所 主任研究員

3

吉本真由美 独立行政法人農業環境技術研究所 主任研究員

4

伊川浩樹 独立行政法人農業環境技術研究所 任期付研究員

5

石田祐宣 弘前大学大学院理工学研究科 助教

6

渡辺力 北大低温研 教授

研究目的 耕地生態系における群落内の微気象環境は、作物の生育や病害虫の生態に影響を与えるだけでなく、大気-植生-地表面間の熱・水・物質輸送を通じて、地域のエネルギーや炭素、窒素の循環を左右し、さらには局地気象の形成にも寄与する。耕地生態系における微気象環境と熱・水・物質輸送との相互作用を解明するため、その過程を再現できる数値モデルを構築し、実測データに用いた検証を行う。特に、結露や降霜が生じる局所的低温条件下での輸送を実測に基づいてパラメータ化することで、寒地の生態系に広く適用できるモデルを構築する。
イネ群落における結露量の季節変化(群落多層モデルによる計算値との比較) イネ群落における結露量の鉛直分布(群落多層モデルによる計算値との比較) 
研究内容・成果 低温科学研究所およびメール等での打合せを通して各メンバーの具体的な役割分担を検討し共同研究を進めた。水田フラックスサイトにおける観測をもとに、前年度から検討開発した地表面および葉面の局所的な低温(安定)条件における熱輸送を適切に計算できるモデルについて、研究代表者らがこれまでに開発してきた水田の群落微気象モデル(Maruyama and Kuwagata, 2010)への組み込みを行い熱収支の再現性を検証した。同時に、担当教員が開発した群落多層モデル(MINCER: Watanabe et al., 2004)を水田に適用するため各種パラメータを設定し、作物の生育や病害虫の生態に影響を与える葉群の濡れ(結露)について、各種気象条件の下での数値実験を実施した。その結果、実際の水田で観測されたイネの葉における結露量の季節変化と鉛直分布を従来モデルよりもうまく再現することができた(図1・図2)。また、気象条件が同じでも水田の水温によって結露量が大きく変化することを明らかにした。また、同モデルを用いて気象環境と作物生育との相互作用を詳細に解析できるようにするため、イネの気孔開閉および光合成の環境応答特性の定量化に着手した。今回の共同研究に関連した水田観測サイトでのこれまでの成果について、3月に岡山市で開催される日本農業気象学会の水田生態系に関わるオーガナイズドセッションにおいて学会発表する(「成果となる論文・学会発表等」の[1][2][3][4]に相当)。
イネ群落における結露量の季節変化(群落多層モデルによる計算値との比較) イネ群落における結露量の鉛直分布(群落多層モデルによる計算値との比較) 
成果となる論文・学会発表等 [1] 丸山篤志ら(2016)水田水深による水面-大気間の熱交換特性の変化のモデル化. 日本農業気象学会全国大会, OS-J3-2.
[2] 桑形恒男ら (2016) つくば近郊の水田における局地気象環境の特徴.日本農業気象学会全国大会, OS-J3-4.
[3] 伊川浩樹ら(2016)真瀬水田フラックスサイトにおける蒸発散の長期データ解析.日本農業気象学会全国大会, OS-J3-6.
[4] 小野圭介ら(2016)フラックス観測に基づく稲単作田の炭素収支モニタリング.日本農業気象学会全国大会, OS-J3-7.
[5] Ono, K. and Kuwagata T. (2016) Apparent diurnal variation in the photosynthesis–conductance relationship observed over a rice canopy. International Symposium on Agricultural Meteorology, PE-17.