共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
惑星表層における氷層の成長・破壊に関する研究 |
新規・継続の別 | 継続(平成25年度から) |
研究代表者/所属 | 東京大学地震研究所 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 栗田敬 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
波多野恭弘 | 東京大学地震研究所 | 准教授 |
2 |
猿谷友孝 | 国立極地研究所 | 特任研究員 |
3 |
田中秀和 | 北大低温研 | 准教授 |
4 |
村田 憲一郎 | 北大低温研 | 助教 |
研究目的 | 地球や惑星表層での雪氷現象は環境をコントロールする重要なものであり,特に水-氷の相変化やそれに伴う氷層の形成・融解は地表付近の物質循環や地形形成に強く影響する。土壌などの多孔質媒体の凍結時に内部に形成される純粋な氷層:アイスレンズは地表付近の熱・物質移動を伴うため植生や水文プロセスと密接に関わっている。アイスレンズに関する研究は室内実験や数値モデリングによって精力的に行われてきたが,詳細な構造観察や物理化学分析が少なかったため形成プロセスに関して未解明な点が多く残っている。本課題ではアイスレンズの形成メカニズムや構造を明らかにするためアイスレンズの観察・分析を行った。 |
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研究内容・成果 | 土壌とガラスビーズを用いて一方向凍結実験を行い,アイスレンズを含む凍結サンプル(凍土)を作成した。無風低温室内で岩石カッターを用いて凍土の薄片を作成し,偏光顕微鏡・実体顕微鏡を用いて結晶構造の観察を行った。 アイスレンズ薄片を偏光観察した結果,アイスレンズは熱流方向に成長する六角形の単結晶の束であり,個々の単結晶は1mm弱の直径をもつことがわかった。また,単結晶のサイズは元の粒子層の粒径と相関しており,粒子サイズが大きいほどアイスレンズを構成する単結晶のサイズが大きくなるという傾向が得られた。しかしながら,氷結晶径(ミリメートル)は,粒子間空隙(マイクロメートル)と3桁ほどスケールが異なっており,氷核生成から結晶成長の段階で何らかのプロセスが働いていることが示唆された。 ガラスビーズなどの微粒子は氷結晶粒界にトラップされると本来考えられていたが,単結晶内部にも多く取り込まれていることが観察された。また,凍結面から析出された空気泡の形状は凍結速度と関係しており,凍結速度が速い場合は点状になることがわかった。 自然環境においては塩などの不純物が水の相変化に影響することが知られており,火星においても塩水の役割は重要視されている。脱イオン水を使った実験に加え塩水を用いての凍結実験も行っており,同様の薄片加工と顕微鏡観察を行った。塩水系でできたアイスレンズは脱イオン水系のものに比べて粒子の吐き出しが弱いためクリアなアイスレンズが形成されず,微粒子のクラスターが結晶粒界にトラップされていた。また単結晶の断面は長方形型であり,従来の六角形型にはならなかった。今後は北極ツンドラ地帯で掘削した永久凍土コアを加工し,天然のアイスレンズなどの結晶構造を観察する予定である。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
猿谷友孝,火星における不凍水とその役割,地学雑誌特集号―火星表面の地形プロセス―, 125巻1号,(49-62),2016 猿谷友孝,アイスレンズの可視・偏光観察による構造推定と塩の影響,H20を科学する,低温科学研究所氷科学研究会共同集会,北海道大学,2015 猿谷友孝,A. W. Rempel. アイスレンズの結晶構造について,雪氷研究大会2015,信州大学,2015 猿谷友孝,末吉哲雄,渡邊達也,池田敦,榎本浩之,永久凍土コアの物理化学分析から探る環境変動,日本地球惑星科学連合2016年大会,幕張,2016 T. Saruya, T. Sueyoshi, T. Watanabe, W.Rempel and H.Enomoto, Structure and distribution of ice lenses in artificial frozen soils and arctic-alpine permafrost,International conference on Permafrost 2016,Potsdam, Germany, 2016. |