共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

積雪中不純物の構成比と表面アルベドの関係
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 海洋研究開発機構
研究代表者/職名 技術研究員
研究代表者/氏名 紺屋恵子

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

宮川琢真 海洋研究開発機構 研究員

2

的場澄人 北海道大学低温科学研究所 助教

3

飯塚芳徳 北海道大学低温科学研究所 助教

研究目的  大気中を浮遊している物質は積雪面へ降下した場合、その量や色により大きくアルベドを変えることが考えられる。アルベドに影響を与える降下物質には、黄砂などのダスト、微生物等のほか、近年注目されているブラックカーボンが含まれていると考えられる。ブラックカーボンは、幅広い波長域で高い光吸収効率を持ち、雪氷面のアルベドを大きく変えている可能性があると言われるが、実際に効果の大きさは不明である。そこで本研究では、各構成物質の量を同定し、効果の大きさを定量的に示すことを目的とする。
積雪表面付近のブラックカーボン濃度  
研究内容・成果 1.試料の採取
 低温科学研究所の露場にて積雪断面観測が実施されている日のうち、2016年1月29日および2月23日の2日間、表面積雪のサンプリングを実施した。断面観測を実施した断面を観察し、平均的な層構造を示している箇所から、5種類のサンプルを採取した。サンプリングは、まず、表面付近の0~2cm深、および2~10cm深について実施した。さらに、2〜10cmについて3層に分け、2~5cm深, 5~8cm深, 8~10cm深の各層についてそれぞれ別のサンプル瓶に採取した。また、1月29日については、内部を加工したサンプル瓶と加工していないサンプル瓶を準備し、2種類について同じサンプルの採取を行った。
 積雪の融解により積雪中の不純物が移動する可能性があるが、1月29日は前日までマイナスの気温が続いていたため融解の影響はないと考えられる。一方で2月23日は、数日間の暖かい日を経過した後だったため積雪は一旦融解したと考えられる。しかし、その後少量の降雪があったため、表面は融解後の降雪による雪が堆積していたと考えられる。また、2月23日の断面観測では、積雪の粒径は小さかったため、融解の影響は少ないと考えられる。

2.ブラックカーボン濃度
 採取したサンプルは、低温科学研究所のマイナス20℃の低温室にて保管後、3月23日に海洋研究開発機構(JAMSTEC)へ輸送し冷凍保管した。ブラックカーボンは、JAMSTECのSP2測定装置を使用し、レーザー誘起白熱法による単一粒子測定方法にて計測した。ただし、濃度はキャリブレーション中のため確定値ではない。図はブラックカーボン濃度を表す。図中の数値はサンプリングした日を示す。1月29日は、0〜2cm、2〜10cmに分けて採取したものを使用した。2月23日は0〜2、2〜5、5〜8cmに分けて採取した。1月29日に表面付近(0〜2 cm)で採取したサンプルでは下層(2〜10cm)よりも多かった。これは、Kuchiki et al. (2015) と同様の傾向を示している。一方、2月23日に採取したサンプルでは表面付近よりも下層のほうが多かった。今後、残りのサンプルの分析を行う。

3.今後の予定
 本研究と同時に採取された低温研露場のサンプルが、気象研究所にてEC/OC炭素分析装置により、サーマルオプテカル・リフレクタンス法によって分析が行われる。そのため、ブラックカーボン総量について、2種類の方法による比較を行う予定である。
積雪表面付近のブラックカーボン濃度  
成果となる論文・学会発表等