共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
昆虫の凍結耐性に関わる体液の氷結晶成長に関する研究 |
新規・継続の別 | 継続(平成25年度から) |
研究代表者/所属 | 島根大学生物資源科学部 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 泉洋平 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
古川義純 | 北大低温研 |
研究目的 | 昆虫の寒冷地への適応は、凍結すれば死亡する凍結回避型と凍結しても耐えられる耐凍型の二つに分けられる。申請者らは昨年までの研究で凍結耐性を持つニカメイガ越冬幼虫の体液は凍結時に比較的均一な結晶構造を取ることを明らかにしつつある。本研究では、凍結耐性をもたないニカメイガ非休眠幼虫の体液が凍結時にどのような結晶成長を行うのかを明らかにする。その結果と越冬幼虫の結果とを比較することにより、凍結時の体液の結晶構造が耐凍性にどのように関連しているのかを明らかにする。 |
研究内容・成果 | 耐凍性をもつ本種越冬幼虫は体液が凍結するがそれによる細胞膜への物理的な障害は観察されなかった。しかし、耐凍性を持たない非休眠幼虫は体液の凍結により細胞膜に障害を受けることを明らかにしている(Izumi et al. 2005)。この細胞膜の障害に体液の結晶成長がどのように関わっているのかを明らかにするため、越冬幼虫、休眠幼虫および非休眠幼虫、またそれらを低温順化した幼虫の体液が凍結時にどのような結晶構造を取るのかを、低温室内にて薄片を作成し偏光微分干渉顕微鏡下で観察をおこなった。その結果、非休眠幼虫では凍結時に体液は不均一で大きな結晶構造を取るのに対して、凍結耐性を持つ越冬幼虫および低温順化を行った休眠幼虫の体液は凍結時に比較的均一で小さな結晶構造をとることを明らかにした。また、非休眠幼虫および越冬幼虫の体液を50倍に希釈し、氷結晶成長を観察したところ、両者において純水の結晶成長とは明らかに異なる、何らかのタンパク質の影響と見られる成長が観察された。両者において観察された結晶成長は互いに異なる形状を示した。これらの結果から、凍結耐性を持つ個体では体液の氷結晶成長を抑制することで、氷晶による物理的な細胞膜への傷害を回避していることが示唆された。しかしながら、それに寄与している物質が何であるかは今後の課題として残った。 |
成果となる論文・学会発表等 | 泉洋平,村上果生,古川義純,体液の氷結晶成長がニカメイガの耐凍性におよぼす影響,日本昆虫学会第76回大会・第60回日本応用昆虫学会合同大会,大阪府立大,堺,2016 |