共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
植物の凍結制御物質の検索と評価 |
新規・継続の別 | 継続(平成26年度から) |
研究代表者/所属 | 農業生物資源研究所 |
研究代表者/職名 | 研究専門員 |
研究代表者/氏名 | 石川雅也 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
1 |
佐崎元 | 北大低温研 | 教授 |
2 |
長嶋剣 | 北大低温研 | 助教 |
3 |
古川義純 | 北大低温研 | 特任教授 |
研究目的 | 耐寒性植物は、進化の過程で凍結温度下でも致死的な細胞内凍結を回避できるように、組織・細胞の水の凍結を制御できる各種凍結制御活性を各組織に獲得し、多様な種および組織・器官に固有の凍結戦略をもつに至ったと考えられる。耐寒性植物組織はこのような凍結制御活性物質の宝庫であることが判ってきた。本課題では、このような凍結制御活性・凍結制御物質を取り上げ、氷晶生成・成長等に対する効果を氷晶成長専門家の下に解析し、これらの活性機構や組織の耐寒性機構での役割等を明らかにする。本年度は、植物から単離した氷核活性物質の結晶面の微細構造をAFMによる観察・解析を試みた。 |
研究内容・成果 | 1.植物組織中で作られた氷核活性物質の結晶を定法によりシナレンギョウより単離した。本天然結晶をAFM観察しやすいようにするため、マイクロサポート社前林氏のご好意によりμプローブ顕微鏡をお借りして、微細針による結晶のマニピュレータ操作を試みた。 (100)面を上にして同方向に10-12μmの結晶を30-50個並べ、石垣のようにスライドガラス上のウレタン樹脂上に配列した。スライドガラスを固定し、札幌まで運び、低温研にてAFM観察に供した。 2.AFM観察により、本結晶の(100)面は渦巻き成長機構で成長したことがわかった。(100)面上では、多数の渦巻きステップが束化され、著しく蛇行する様子が観察された。これらは、天然品結晶が不純物が多い状態で成長した(植物組織内で)ことを示唆した。 3.一方、石井の方法(1991)により人工合成した同じ物質の結晶の(100)面をAFMで観察したところ、結晶面は2次元核成長機構で成長したことが判った。天然品結晶に比べて人工合成結晶の表面は極めてスムースで、ステップの蛇行も見られなかった。また、ステップは束化しておらず、ステップの高さは結晶学的に予想される5.93Åと一致した。これらの結晶の特徴は、結晶が天然に比べて不純物がより少なく、かつより高過飽和な状態から成長したことを示唆した。 4.本結晶の氷核活性を試験管法により測定したところ、同じ濃度で投与しても天然結晶の方が人工結晶(巨視的にはほぼ同じサイズ領域)より氷核活性が高かった。これらは(100)面上におけるステップ数の頻度が関係していることが予想される。これらの結晶ステップのさらなる定量的解析や本結晶における液相および気相からの氷晶形成の観察が今後必要であると考えられる。 |
成果となる論文・学会発表等 |
1. Ishikawa M,et al. (2015) Factors contributing to deep supercooling capability and cold survival in dwarf bamboo (Sasa senanensis) leaf blades. Frontiers in Plant Science, Functional Plant Ecology 5: 791. 2. Ishikawa M, et al. (2015). Ice nucleation activity in various tissues of Rhododendron flower buds: their relevance to extraorgan freezing. Frontiers in Plant Science, Functional Plant Ecology 6: 149. 3. 灘浩樹,越後拓也,豊増孝之,山崎秀幸,村川裕基,朽津和幸,石川雅也 (2015) レンギョウ枝髄に含まれる新規氷核活性物質の活性機構 第60回低温生物工学会 4. Ishikawa M, Ide H, Tsujii T, Price, WS, Arata Y. (2015) Preferential freezing avoidance localized in the anthers and embryo sacs in wintering flower buds of Daphne kamtschatica var. jezoensis revealed by NMR micro-imaging. Bio-imaging学会 |