共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
ドームふじ深層コアの固体塩微粒子が氷結晶の転位の移動に与える影響 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北見工業大学 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 堀彰 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
宮本 淳 | 北海道大学高等教育推進機構 | 特任准教授 |
2 |
飯塚芳徳 | 北大低温研 | 助教 |
3 |
大野 浩 | 北見工大 | 助教 |
研究目的 | ドームふじ氷床深層コアの研究では,不純物が固体の塩微粒子として存在していることを世界で初めて明らかにする等,海外の研究グループとは一線を画す研究成果が得られている。 一般に氷結晶に取り込まれた不純物は氷を変形しやすくすると考えられているが,固体の塩微粒子として存在すると,氷の変形(塑性変形)で導入される転位の移動の障害となり,従来の定説とは逆に氷が変形しにくくなる可能性がある。そこで本研究では,X線回折法によりドームふじ深層コアの氷結晶の転位密度を測定し,氷床コアにおいて塩微粒子が転位の移動の障壁となるかどうかを明らかにすることを目的とする。 |
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研究内容・成果 | ドームふじ氷床コアの塩微粒子濃度を,Ohnoら(2006)が報告している深さとほぼ同じ深さの577m,1376m,1776m,2269mの各深さの試料から薄片を作製し,ラウエ法による結晶方位測定を行った後,薄片に含まれる氷結晶に対してX線回折測定法により,結晶の方位に応じて(10-10)回折,(10-11)回折, (10-12)回折,(11-20)回折のロッキングカーブの測定を行った。得られたプロファイルはGauss関数でフィッティングを行い,その幅から転位密度を求めた。転位密度はほぼ同じ深さの試料で測定された固体塩微粒子の濃度と比較を行い、その影響を調べた。なお,当初は塩微粒子の位置を試料内での位置を確認した上で,測定場所を少しずつ変化させて測定を行う予定であったが,X線の光学系でビームスポット幅を十分に狭くできないことや,試料取り付け後の位置の精度が0.1mm程度と粗く塩微粒子の位置を再現できない等の理由により,研究方法を一部変更した。 (10-10)回折線幅から求められた上記の深さ577m,1376m,1776m,2269mの氷の転位密度は,それぞれ3x10^10,2x10^11,6x10^10,3x10^10 m^(-2)となった。これらに対応する深さ576m,1351m,1776m,2280mの試料の固体塩微粒子の濃度は,Ohnoら(2006)により,それぞれ,4x10^5,1x10^5,1x10^4,1x10^4 g^(-1)と報告されている。全般的に,固体塩微粒子の濃度と転位密度の間には相関は見られなかった。個々の結果については,まず,最も浅い深さ577m(LGMの時期に相当)の試料において,固体塩微粒子濃度が最も低高く,転位密度も低かった。しかし、その理由としては,固体塩微粒子の影響だけではなく,平均粒径が約2mmで深さ2000mの半分に満たないことから,粒界の影響も考えられる。次に,1376mについては,氷期で固体塩微粒子が多いにもかかわらず,転位密度は今回の測定中最も高い値を示した。さらに,Eemian間氷期に相当する深さ1776mの試料では,今回の測定中2番目に高い転位密度となり,固体塩微粒子の濃度が低く,同じく間氷期に相当する2269mでも,これと同程度の高い転位密度の値を示した。以上から,氷期で固体塩微粒子濃度が高いにもかかわらず,高い転位密度であった1376mを除けば,固体塩微粒子の濃度と転位密度には相関があることが示唆された。 本研究で,固体塩微粒子濃度と転位密度との間には,微粒子が転位の移動を阻害することに起因する相関がある可能性が示唆されたが,最終的な結論を得るためには、それに該当しない深さ1376mでなぜそうなるのか,粒径や不純物イオン濃度等の他の要因との相関も検討して議論する必要がある。 |
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成果となる論文・学会発表等 |