共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

嫌気性石油分解微生物の培養における培地固化剤に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 高知工業高等専門学校
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 東岡由里子

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

福井学 北大低温研

2

小島久弥 北大低温研

研究目的  微生物の培養において固体培地を用いる場合、一般的に固化剤として寒天が広く用いられてきた。その一方で、寒天培地では増殖しない微生物が存在することも知られている。また、多糖類であるゲランガムを培地固化剤として用いると、寒天を使用した培地では増殖しない細菌が増殖した例がある。したがって、培地固化剤を変更することで、これまで得られなかった新規性の高い微生物を培養・分離することができると考えられる。本研究では、新規性の高い嫌気性石油分解微生物を培養することを目的とし、培地固化剤に着目した培養法の検討を行った。
  
研究内容・成果  まず、絶対嫌気性微生物である硫酸還元菌を対象とし、培地固化剤の検討を行った。硫酸還元菌用液体培地に対して0.7%、1.0%、1.3%量のゲランガムあるいはカラギーナンを加え固化した。接種源を混釈法により接種し、培地固化後に炭素およびエネルギー源としてトルエン、ベンゼン、シクロヘキサンのいずれかを2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナンで希釈して培地表面に加えた。接種源として厨房排水あるいは北海道石狩油田土壌を用いた。その結果、培養開始後30日においても増殖が認められなかった。
 微生物の増殖がみられなかった要因の一つとして、炭素およびエネルギー源として加えた基質の生物毒性が高いことが挙げられるため、フマル酸ナトリウムに変更して培養を行ったが、増殖は認められなかった。用いた接種源の厨房排水は有機物含有量が多く油脂も多く含んでいるが硫酸イオン濃度は低い。石油系炭化水素を含む石狩油田土壌も陸上土壌であり硫酸イオン濃度は高くない。したがって、硫酸還元菌の存在量が少なく増殖が困難であったと考えられる。今後、海洋堆積物など硫酸還元菌が多く分布する接種源を用いた培養を行う予定であり、その一つとして高知県浦戸湾干潟堆積物を採取した。
 また、カラギーナンを固化剤として用いた培地では、培養開始後10日以降にゾル化したものがあった。カラギーナンは培養温度として一般的な中温でも(本研究では30℃)固体を維持できないことから、他の固化剤を混合した条件での培養を検討した。
 カラギーナンと混合する培地固化剤として、寒天、ゲランガム、アルギン酸ナトリウムのいずれかを用いた。2つの固化剤の合計濃度が1.3%となるように混合し、培地の状態を観察した結果、寒天を0.3%以上含む培地およびゲランガムを0.3%以上含む培地が、固体培地として適していた。寒天培地、ゲランガム培地、カラギーナンと寒天の混合培地、カラギーナンとゲランガムの混合培地の4種類について、今後、干潟堆積物を用いて硫酸還元条件下で培養を行う予定である。
  
成果となる論文・学会発表等