共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

顕微鏡下での雪氷微生物の特異的検出および可視化手法の開発
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 株式会社ドキュメンタリーチャンネル
研究代表者/職名 代表取締役
研究代表者/氏名 藤原英史

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

野原精一 国立環境研究所 室長

2

福井学 北大低温研

3

小島久弥 北大低温研

研究目的 融雪期に湿原や湖沼の積雪が赤褐色を呈するアカシボ現象は、世界各地で観察される。主に積雪中に蓄積された酸化鉄の色に由来すると考えられ、約10μmの粒子が多数存在する場合がある。多量のアカシボ粒子による積雪の着色は、尾瀬ヶ原や尾瀬沼において大規模に発生することが知られており、アカシボ粒子を微弱な酸で溶かすと、中から様々な形態のバクテリアが現れる。しかしながら、光学顕微鏡による形態観察のみでは、種を同定することは不可能である。そこで、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法と、顕微鏡下での酸化鉄の可溶化等を組み合わせた新たな可視化法を開発し、アカシボ粒子を作るバクテリアを解明することを目的とする。
  
研究内容・成果 2015年5月に、尾瀬ヶ原、尾瀬沼で新鮮なアカシボ粒子を新たに採集した。現地ですぐに固定処理し、サンプルとした。サンプリングは、尾瀬ヶ原・尾瀬沼のアカシボ生態系の研究を長年続けている国立環境研究所の野原精一と共に行い、サンプルを採集した地点の水温や溶存酸素濃度の測定などを行った。サンプルは、国立環境研究所内の冷凍庫で、-20℃で保存した。
 2015年8月に、サンプルを北大低温科学研究所に送付し、ガラスフィルターで濾過し、バクテリアを含む酸化鉄の粒子をガラスフィルター上に移した。プローブで染色を行う際、バクテリアを包む酸化鉄があると、プローブがブロックされてしまい、うまく染色ができない。そこで、このガラスフィルターにシュウ酸処理を行い、バクテリアの表面を包む酸化鉄を溶かした後、アガロース包埋をする。しかし、シュウ酸処理によってアカシボ粒子に含まれていたバクテリアが流出してしまう可能性があったため、フィルターにDAPI染色を施し、確認を行った。シュウ酸の濃度、処理時間によっては、明らかにバクテリアが流出している傾向が見られた。それを防ぐため、あらかじめアガロース包埋した後に、シュウ酸処理を試した。すると、その処理の順番でも、問題なく、バクテリア表面の酸化鉄を溶かすことができることがわかった。したがって、サンプルの処理は、あらかじめアガロース包埋した後に、シュウ酸処理を施すことにした。また、顕微鏡でろ紙を観察しながら、シュウ酸の必要十分な濃度や処理時間を検討した結果、規定の5倍に希釈した物で、5分間処理する方法が、程良く酸化鉄を溶かし、バクテリアを囲んでいた酸化鉄をわずかに残しつつ、バクテリアの流出も抑えることができる最良の方法であると判断した。
今回、バクテリアを検出するための蛍光プローブは、Eub1-3、とコントロール(Non)を用いた。フィルターを切断し、規定通り、蛍光バックグラウンドを軽減させ、バクテリアの殻に穴を開けるための処理を行い、ハイブリダイゼーションを行った。処理を行ったフィルターに、DAPIで二重染色を施し、プレパラートを作成。
プレパラートは冷蔵で持ち帰り、ドキュメンタリーチャンネルで、蛍光顕微鏡観察と撮影を行った。その結果、DAPI およびEub1-3で蛍光染色されたバクテリアを蛍光で認識することができた。また、ハイブリダイゼーション処理を行うと、DAPIによる染色が弱くなる蛍光が見られた。
今後、尾瀬沼で検出されるバクテリアに合った様々な蛍光プローブを用いることで、アカシボ形成に関わるバクテリアの特定につなげていきたい。
  
成果となる論文・学会発表等