共同研究報告書


研究区分 萌芽研究

研究課題

グリーンランド浅層コアを用いた人為起源エアロゾルの解読
新規・継続の別 萌芽(1年目/全3年)
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 飯塚芳徳

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

本山秀明 国立極地研 教授

2

鈴木利孝 山形大 教授

3

藤田秀二 国立極地研 准教授

4

堀彰 北見工大 准教授

5

堀内一穂 弘前大 助教

6

平林幹啓 国立極地研 助教

7

植村立 琉球大 准教授

8

的場澄人 北大低温研

9

関宰 北大低温研

10

大藪幾美 北大低温研

研究目的  本研究では、グリーンランド氷床コアを分析し、過去数十年の地球温暖化と人為起源エアロゾルの関係解明を最終的な目的とする。北極グリーンランド氷床コアは低温のためエアロゾルが保存されており、人為起源エアロゾルの変遷を評価するにあたり、最適の古環境媒体である。
 申請者らはH27年度の目的として、グリーンランド南東部でアイスコアを採取し、アイスコアを無事に低温研まで輸送する。また、採取したアイスコアを用いて共同研究者による独創的な分析を推進する。
  
研究内容・成果  IPCCの第5次報告書によれば、人為起源の気温変化のうち、水溶性エアロゾルが雲核となって雲アルベドに与える評価が最も未解明である。水溶性エアロゾルが雲アルベドに与える効果を評価する一つの有力な取り組みとして、近年の人為起源水溶性エアロゾルの変遷を解読し、過去から現在のエアロゾル変遷と気温変動の関係をふまえて将来予測をしていく方法がある。北極グリーンランド氷床コアは低温のためエアロゾルが保存されており、人為起源エアロゾルの変遷を評価するにあたり、最適の古環境媒体である。
 申請者らは低温研萌芽研究予算を使用させていただき、5月にグリーンランド南東部で90mのアイスコアの採取に成功した。日本の雪氷コミュニティーとしては実績のないグリーンランドの一都市での物資や燃料の補給に始まり、ヘリコプターのチャーターの交渉や都市部における掘削した氷の一時保管庫の確保など、論文などにはできないが貴重な経験を低温研の若手教員が得ることができた。
 また、同予算のおかげで8月にアイスコアを無事に低温研まで輸送することができた。現在、アイスコアの物理的・化学的な分析を続けている。グリーンランド南東部はこれまでほとんど掘削が行われておらず、グリーンランドでは稀有な高涵養量地域であり、高時間分解能な欧州の人為起源物質や北大西洋振動などをよく記録していることが予想される。さらに、本申請の共同研究者が培っている世界最先端の分析技術を適用することで、今後新しい成果が得られる可能性が高い。
 初期的な成果として、下記のように5報の学会発表と2報の論文投稿をした。特に論文に関しては、掘削・調査の報告と現地で観測したエアロゾルの解析結果をまとめたものを投稿した。両者とも2016年1月25日現在で受理直前の状況にある。昨年9月から開始したアイスコアの解析の進捗に応じて、今後より多くの成果公開を続けていく予定である。
  
成果となる論文・学会発表等 [学会発表]
的場 澄人、飯塚 芳徳、新堀 邦夫、第21回 低温科学研究所 技術報告会、平成27年12月11日

Yoshinori IIZUKA, Sumito MATOBA,and others,ILTS International Symposium on Low Temperature Science, ILTS, 30 November 2015

Yoshinori Iizuka, Sumito Matoba,and others,The Sixth Symposium on
Polar Science, NIPR, 16 November, 2015

飯塚芳徳,的場澄人,ほか, 日本雪氷学会研究大会、2015年9月14日

飯塚芳徳,的場澄人,新堀邦夫、日本雪氷学会極地雪氷分科会、2015年9月13日

「投稿中論文」
Ikumi Oyabu , Sumito Matoba, Tetsuhide Yamasaki, Moe Kadota, and Yoshinori Iizuka, Seasonal variations in the major chemical species of snow at the South East Dome in Greenland, Polar Science (Submitted at 15 Nov. 2015)

Yoshinori IIZUKA, Sumito MATOBA, Tetsuhide YAMASAKI, Ikumi OYABU, Moe KADOTA, and Teruo Aoki, Glaciological and meteorological observations at the SE-Dome site, southeastern Greenland Ice Sheet, Bulletin of Glaciological Research (Submitted at 15 Dec. 2015)