共同研究報告書
研究区分 | 研究集会 |
研究課題 |
湖沼メタン酸化細菌叢とメタン栄養食物網のグローバルパターンの解明 |
新規・継続の別 | 継続(平成25年度から) |
研究代表者/所属 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 奥田昇 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
1 |
藤林恵 | 東北大院工学 | 助教 |
2 |
伊藤雅之 | 京大東南アジア研 | 助教 |
3 |
中野伸一 | 京大生態研センター | 教授 |
4 |
陀安一郎 | 京大生態研センター | 准教授 |
5 |
夏復國 | 中央研究院環境変遷中心 | 研究員 |
6 |
柯佳吟 | 中央研究院環境変遷中心 | ポスドク研究員 |
7 |
小林由紀 | 中央研究院環境変遷中心 | ポスドク研究員 |
8 |
張俊偉 | 中央研究院環境変遷研究中心 | 博士課程 |
9 |
何珮綺 | 中央研究院環境変遷研究中心 | 博士課程 |
10 |
林登秋 | 國立台灣師範大學生命科學系 | 教授 |
11 |
謝志豪 | 國立台灣大學海洋研究所 | 副教授 |
12 |
三木健 | 臺灣大海洋研究所 | 副教授 |
13 |
福井学 | 北大低温研 | |
14 |
小島久弥 | 北大低温研 |
研究集会開催期間 | 平成 26 年 6 月 24 日 〜 平成 26 年 6 月 25 日 |
研究目的 | 湖沼は、高い温室効果をもつメタンの主要な自然放出源である。湖底から放出される溶存メタンを好気・嫌気的に同化する微生物機能群を「メタン酸化細菌」とよぶ。メタン酸化細菌を起点とした「メタン栄養食物網」は、メタン由来有機炭素を湖沼生態系の炭素循環に組み込むことによって、メタンの大気放出を抑制する「天然の炭素リサイクルシステム」とみなすことができる。メタン酸化細菌の研究は、寒帯・温帯湖沼で精力的に進められているものの、全球的な分子系統地理および生態系機能に関する知見は限定的である。本研究集会は、亜熱帯湖沼におけるメタン酸化細菌叢およびメタン栄養食物網に関する理解を深めることを目的とする。 |
|
|
研究内容・成果 | 本研究集会は、日台合同国際ワークショップとして平成26年6月24-25日に北海道大学低温科学研究所にて開催され、17名が参加した。ワークショップは、2部で構成され、第一部では、日台合同調査地として台湾・翡翠水庫で実施されている学際研究T-WEBIIの概要が夏復國氏により紹介された。その後、柯佳吟氏よる長期生態系動態に関する研究、張俊偉氏よる食物網の体サイズ構造に関する研究が紹介され、最後に、林登秋氏より、台風が集水域に及ぼすスケール依存的影響に関する話題提供によって締めくくられた。 第二部では、まず、共同研究代表者(奥田)が、湖沼におけるメタン酸化細菌の生態系機能について解説した。続いて、伊藤雅之氏が、翡翠水庫の溶存メタン濃度及びその炭素安定同位体比の時空間動態について紹介した。冬季気温の年変動によって全循環と部分循環が交互に起こる本湖は、温帯と熱帯湖沼の特徴を併せ持ち、冬季部分循環による深水層の貧酸素化が、翌夏のメタン生成過程に波及することを明らかにした。また、水柱での迅速なメタン酸化によって、移流により表層に運搬された深水層メタンのほとんどが大気中に放出されることなく、メタン酸化細菌に取り込まれることを示唆した。 福井学氏は、翡翠水庫のメタン酸化細菌叢の分子系統について報告した。寒帯や温帯で優占するType Iメタン酸化細菌に加えて、熱帯湖で数例の報告があるType IIが出現することを確認し、本湖のメタン酸化細菌叢が温帯と熱帯の要素を併せ持つことを明らかにした。また、本湖深水層において、嫌気環境下で脱窒に由来する亜硝酸の酸素を電子受容体としてメタン酸化する独自の代謝経路をもつNC10とよばれる系統群が観察された。本系統群は、これまで排水路や湖底泥中など嫌気環境から報告されている。本研究は、湖沼水柱での生息を確認した初めての研究事例として、論文に公表された(下記、研究業績参照)。さらに、小林由紀氏は、FISH法を用いて本湖におけるメタン酸化細菌叢の季節・鉛直プロファイルを解析し、上記3系統群の消長要因について考察した。 何珮綺氏は、炭素・窒素安定同位体分析を用いて、動物プランクトンに流れるメタン栄養食物網の炭素・窒素フローの決定要因を解析し、夏季成層によって発達する深水層のメタン貯蔵が冬季循環によるメタン酸化細菌生産に影響を及ぼすと結論付けた。また、藤林恵氏は、メタン酸化細菌特異的な脂肪酸をバイオマーカーとしてメタン栄養食物網を定量化する脂肪酸分析手法を用い、何珮綺氏の安定同位体混合モデルの妥当性を裏付けた。最後に、三木健氏の代理で謝志豪氏が、湖沼のメタン循環を理解するための数理モデルを構築し、モデルの予測が現場の観測値によって支持されることを実証した。 これらの進捗報告に基づき、翌日に、今後の共同研究計画を策定するための総括会議を実施した。 |
|
|
研究集会参加人数 | 17 人 |