共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

植物群集における競争強度場と多種共存メカニズムの解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 静岡大学大学院工学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 横沢正幸

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

中河嘉明 筑波大学大学院生命環境科学研究科 博士課程

2

原登志彦 北大低温研

研究目的 我々はこれまでに同種同齢の樹木個体群において、個体間競争を「競争強度場」、「競争ネットワーク」という新しい見方を提案するとともに、ファシリテーション(大個体が近隣の小個体の成長と生存を促進する効果)の存在や個体の集中分布形成を理論的に示した。本研究では、この理論を多種系へと拡張し妥当性の検証を目的とする。具体的には、1)多種系における個体間競争の定量化、2)多種系での競争関係について考察する。
  
研究内容・成果 1)生長-競争モデルのパラメータ推定
 大雪山の調査区域(50×200m)には、主にトドマツ、アカエゾマツ、エゾマツが存在し、2000、2004、2008年の毎木の胸高直径データと位置データが存在する。この毎木データ(約2380個体)を元に個体(DBH>1cm)の生長-競争モデルのパラメータをベイズ推定した(計算方法としてはマルコフ連鎖モンテカルロ法を使用。以下ではMCMCと省略して表記する)。モデルは、Schneider et al.(2006)によって提案された植物個体の生長と競争のダイナミクスを記述したモデルを改良したものを使った。これによって、種ごとの競争のパラメータが得られる。しかし、このモデルは個体ベースモデルであるため、対象のプロットの個体数が増えると計算量の爆発が起きてしまう。N体シミュレーションにおいて最も時間がかかるのは粒子(個体)間相互作用の計算であり、N体シミュレーションのMCMC計算量はN**2✕tのオーダーになる(Nは個体数、tはMCMCのrun数)。そこで、以下の2つの手法でMCMCを行った。
 手法I:3種の個体数が均等な区域を選び出し(全個体数は302個体)、そのデータをもとにMCMCを行いモデル・パラメータを推定した。
 手法II:対象区域を4分割し、分割区域k (k= 1, …, 4)ごとに以下の手順でMCMCを行った。
 1.事前分布を一様分布として分割区域1でパラメータ推定。
 2.分割区域k'(2≦k'≦ 4)において分割区域k'-1で推定したパラメータの事後分布を事前分布として用いパラメータを再度推定。
 手法IIでは、計算量はN**2✕t/4のオーダーで、全個体数でMCMCを行った場合の1/4程度で済む。パラメータ推定の結果は、手法Iでは、パラメータの多くが事後分布の分散が大きくなったが、手法IIではパラメータの多くの事後分布の分散は小さくなった。手法IIを以下の解析では使用した。

2)種内/間における競争関係
 推定したモデルパラメータの事後分布の平均を使用して、種内/間における競争(1個体が受ける競争強度の平均)を定量化した。その結果、トドマツでは[アカエゾマツ、エゾマツ、トドマツ]の順に、アカエゾマツでは[エゾマツ、アカエゾマツ、トドマツ]の順に、エゾマツでは[トドマツ、エゾマツ、アカエゾマツ]の順に強い競争の影響を受けていた。最も強く影響を与える種だけに注目すると、3種は三すくみの関係(トドマツはエゾマツに勝ち、エゾマツはアカエゾマツに勝ち、アカエゾマツはトドマツに勝つという関係)にある。このような三すくみ関係では、局所的な相互作用と分散という条件下では3種共存が生じることが知られており(Kerr et al., 2002)、この三すくみの競争関係が3種の共存にとって重要なのではないかと考えられる。

引用文献
Schneider, M. K., R. Law, and J. B. Illian. 2006. Journal of Ecology 94: 310-321
Kerr et al., 2002. Nature 418: 171–174
  
成果となる論文・学会発表等 中河嘉明, et al. 大雪山の森林群集における種間競争の推定, 2014年度統計関連学会連合大会, 2014年9月13日
Y. Nakagawa, M. Yokozawa, T. Hara, Competition among plants can lead to an increase in aggregation of smaller plants around larger ones. Ecological Modelling 301. 41–53. 2015