共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

環境変化に対する北方森林生態系の生理生態応答の不確実性評価
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 広島大院生物圏
研究代表者/職名 講師
研究代表者/氏名 戸田求

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

原登志彦 北大低温研

研究目的 環境変動に対する冷温帯から亜寒帯にかけての、いわゆる北方森林生態系の応答評価に関する現在の研究は,野外観測,リモートセンシングや航空機などの遠隔探査計測,数値モデルに代表されるように,実に多彩な調査方法を駆使して進められている。本研究では,日本の冷温帯および亜寒帯森林でのエネルギー・炭素動態フラックス研究でえられた観測データを使い,北方森林生態系と環境との相互作用に関わる不確実性を評価可能なデータ同化研究を進める。
  
研究内容・成果 冷温帯の森林を対象とした気候変動に対する森林の生理・生態的応答を評価するため,逆推定法を用いたBayesian データ同化法を用いた。この方法から,計測されているデータを強制項として、未計測の生物要因について推定することを試みた。対象サイトは,北海道内にある複数の森林で若齢林と老齢林を対象とした。この結果から,気候の変動に若齢林は大きく影響を受け,強風を受けた際には生理的変動を示すパラメータ因子に大きな変化が認められた。一方で,老齢林において機能的および構造的な変化はみられなかった。同様の気象条件化にあっても,それぞれが有する生活系の違いが植生状態やそれに付随する生態系炭素循環に大きな影響を及ぼすことが示唆された。また、同様の研究アプローチを同じ冷温帯に広がる欧州の森林に適用し,気候変化影響のデータ同化法を試みた。その結果,この対象となる森林は老齢林であり,通常の気象変動に対する耐性は十分に備わっていた。そのため,構造的被害も無く,生態系に置ける炭素動態にも大きな変動が無かった。しかし,2003年に起きた熱波は高温と乾燥をもたらし,植生機能に変動をきたした。その後の回復過程に置いては緩やかではなく,次年度以降はすぐに元に戻る結果を示した。このことから,気候変化とそれに伴う撹乱が森林生態系に及ぼす影響は多様であるが,幾つかの事例を検証していくことで一定の幅を持って撹乱影響評価を行うことが出来ることが示唆された。以上より、本研究では当初の目的通り,複数の冷温帯森林の環境影響応答を評価することが出来た。
  
成果となる論文・学会発表等 戸田 求 (2014) 地域スケールにおける大気と陸域生態系の相互作用『現代生態学講座 2巻 地球環境変動の生態学』日本生態学会編,共立出版
戸田 求, 横沢正幸,原登志彦 (2014) 環境変動と北方森林応答,気象研究ノート, 230.159-167.
戸田 求,福澤加里部,中村誠広,田中幹展,吉田俊也,柴田英昭,王新,石田祐宣,宮田理恵(2015)台風撹乱が北方森林の生理・生態および生態系炭素動態へ及ぼす影響,低温科学. (受理)