共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

分子科学的実験手法を用いたイオン誘起微粒子核生成過程の解明
新規・継続の別 継続(平成25年度から)
研究代表者/所属 独立行政法人理化学研究所 仁科センター
研究代表者/職名 専任研究員
研究代表者/氏名 中井陽一

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

小島隆夫 独立行政法人理化学研究所 専任研究員

2

渡部直樹 北大低温研 教授

3

日高宏 北大低温研 助教

研究目的 地球大気中や宇宙空間には様々な種類の微粒子が雲粒の形成や分子進化などに関与するため、それらの形成過程にも興味が持たれている。微粒子形成の初期段階では、上記の環境中で生成されたイオンの静電的引力によるクラスターイオン生成が重要な過程のひとつと考えられている。分子科学的な実験手法を用いて、微粒子凝結核(微粒子核)として重要な役割を持つクラスターイオンの生成に関わる基礎物理量の測定を行ない、微粒子核生成に迫ることが目的である。
  
研究内容・成果 従来のクラスターイオン生成実験では、試料ガス内で電離を起こし反応を誘起して最終生成物を観測することが多い。その条件では多くの初期反応が混在して反応経路が推定の域を超えないという問題があり、反応経路を特定した基礎物理量の測定には実験的な難しさがある。これまで我々は、クラスターイオン生成の種となるイオン(種イオン)の生成部とクラスターイオン生成を起こす反応部を分離した装置を開発してきた。本年度は、この装置を用いて、生成領域には非飽和蒸気圧の水蒸気のみを入れ、H3O+(H2O)nクラスターイオンの逐次水分子付加・脱離反応の反応平衡の生成領域に加えられた電場に対する依存性を調べた。電場がある時の反応平衡定数の対数は電場の2乗と一次関数の関係があり、電場の2乗に比例する項の係数は水蒸気圧力に対して強く依存することがわかった。さらに、電場がある場合の反応平衡に関する経験的な有効温度と見なせる量を引き出すことができた。また、昨年度開始した種イオンをNO+とする実験を継続した。NO+イオンは、イオン源内で電子基底状態と寿命の長い準安定電子励起状態が混じって生成されることが知られている。NO+イオン、NO+(H2O)n (n=1〜3) のクラスターイオンの間で成立していると考えられる擬似的反応平衡について、非飽和蒸気圧の水蒸気のみを満たした移動管内部の電場を変えて測定を行ったところ、クラスターサイズによって電場依存性の向きが異なるなど、他の手法による先行研究で得られている情報からの予想と異なる結果となった。移動管内部気体として水蒸気とバッファガスの混合気体を用いるなどの実験から、この現象はNO+イオンの準安定電子励起状態が引き起こしている可能性が考えられる。
  
成果となる論文・学会発表等 渡部直樹、日高宏、中井陽一、小島隆夫: 日本地球惑星科学連合大会2014年大会、2014年5月1日、神奈川県横浜市
日高宏、中井陽一、小島隆夫、渡部直樹: 日本地球惑星科学連合大会2014年大会、2014年5月1日、神奈川県横浜市
中井陽一、日高宏、渡部直樹、小島隆夫: The 17th International Symposium on Small Particles and Inorganic Clusters、2014年9月9日、福岡県福岡市
日高宏、中井陽一、小島隆夫、渡部直: The 17th International Symposium on Small Particles and Inorganic Clusters、2014年9月11日、福岡県福岡市
中井陽一、日高宏、渡部直樹、小島隆夫: Workshop on interstellar Matter 2014、2014年10月16日、北海道札幌市
日高宏、中井陽一、小島隆夫、渡部直樹: Workshop on interstellar Matter 2014、2014年10月16日、北海道札幌市
中井陽一、日高宏、渡部直樹、小島隆夫: 日本物理学会 第70回年次大会、2015年3月21日、東京都新宿区