共同研究報告書
研究区分 | 研究集会 |
研究課題 |
氷河変動の地域性に関する地理的検討 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 信州大学山岳科学総合研究所 |
研究代表者/職名 | 助教 |
研究代表者/氏名 | 朝日克彦 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
安仁屋政武 | 筑波大 | 名誉教授 |
2 |
岩田修二 | 東京都立大 | 名誉教授 |
3 |
水野一晴 | 京都大 | 准教授 |
4 |
三浦英樹 | 極地研 | 助教 |
5 |
奈良間千之 | 新潟大 | 准教授 |
6 |
福井幸太郎 | 立山カルデラ砂防博物館 | 研究員 |
7 |
紺屋恵子 | 海洋研究開発機構 | 研究員 |
8 |
目代邦康 | 自然保護助成基金 | 主任研究員 |
9 |
梶山貴弘 | 日大・院 | 大学院生 |
10 |
白岩孝行 | 北大低温研 |
研究集会開催期間 | 平成 25 年 6 月 17 日 〜 平成 26 年 6 月 18 日 |
研究目的 | 今日,地球温暖化による世界の氷河の後退とその後退が加速していることが「事実」として認識されるている.一方で,氷河は世界に16万あるとされるが,そのうち過去の氷河末端変動が明らかにされている氷河は2000程度でしかない.また全般的な氷河後退が事実であるとしても,19世紀半ばまでの「小氷期」以降の氷河後退と,地球温暖化による氷河後退の「加速」との関係は明確ではない.世界各地,気候条件がそれぞれに異なることを考慮すれば,世界中一様に氷河が後退したり,一様に後退が加速することは考えがたい.そこで,氷河変動について各地をフィールドにする研究者で会し,世界各地の氷河変動を総括する. |
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研究内容・成果 | 2013年6月17・18日の両日,北海道大学低温科学研究所において研究集会「氷河変動の地域性に関する地理的検討」を開催した.15件の発表があり,これを踏まえた総合討論,および発表内容を取りまとめた成果物として出版物刊行について議論した. 研究集会は,今日,地球温暖化による世界的な氷河縮小が「事実」として認識される一方で,フィールドにおいて氷河変動を観測している研究者自身,自身のフィールドには精通していても,それ以外の地域の氷河変動には疎く,世界全体の変動の実像を知る研究者がそもそも著しく少ない.また各地の氷河はその地域固有の気候条件に規定されており,したがって世界各地の氷河変化が一様に生じるはずがない.そこで世界各地の氷河変化を総括する,という目的意識のもとに参集した.そこで,すべての発表に「各地の氷河の形成条件である気候について発表の冒頭に説明をして欲しい」という条件を付して発表をお願いした. 報告事例はまず氷河変動とは何かという問題提起から始めた.フィールドでの報告は,アジアでは日本,シベリア,モンゴル,中央アジア,カラコルム,ヒマラヤについて,熱帯はエクアドル,ニューギニア,アフリカ,南半球はパタゴニア,南極から,それぞれ報告があった.これらの発表を総括すると,一部の例外事例はあるものの全般的な氷河後退傾向は顕著である.一方で,それぞれの地域内においても気候条件が大きく異なるために狭い範囲の中でも氷河後退の程度が大きく異なることが各地から報告された.すなわち,山脈の中でも風上か風下かで降水量が大きく異なったり,あるいは山脈を挟んで降雪時期が冬季かそれいがいの季節か異なり,そのために氷河の形成条件がまったく異なる,ということである.このほか,熱帯の様に気温の年較差がほとんどなく代わりに日較差が大きい場所,あるいは南極のように通年でほとんど気温がプラスにならない場所など,地域特有の気候条件が明らかになった.この研究集会での特質のもう1点は,同じ氷河変動を対象に研究をしつつも,その切り口が研究者によって大きく異なることが明確になった.氷河変動そのものを扱う研究者,或いは水文現象,生態系,環境ー人間系など,問題意識の所在が大きく異なる.同様に氷河変動の時間スケールも大きく異なる.氷河期ー間氷期スケールから,最終氷期以降,完新世,小氷期,そして現在進行形の変化である. この様に,本研究集会を通して,氷河変動について,世界スケールでの比較が多様性に富むのみならず,各地域内ですら極めて多様であることがはっきりとした.この様な事例報告はわが国のみならず,世界的にも稀な報告事例であり,本研究集会の開催意義を現した. なお成果を報告書としてまとめた.近日中に北大図書館のHUSCAPでも公開する予定であり,低温科学研究所の共同利用の成果を還元する手段として新しい事例を作ることができた. |
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研究集会参加人数 | 21 人 |