共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

近赤外カメラを用いた雪氷コアの解析手法の開発
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 防災科学技術研究所
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 山口悟

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

的場澄人 北大低温研

2

飯塚 芳徳 北大低温研

研究目的 雪氷コアの解析において, 粒径の分布や融解の有無の情報は重要である. しかし今までは現場での解析が困難であり, コアを冷凍して低温室に持ち帰って解析をする方法が主流であった. 一方近年積雪の断面観測の解析の分野では, 近赤外域を撮影できるカメラを用いて, 積雪の構造を非破壊で詳細に測定する方法(光学的粒径測定法)が開発されてきている. 仮に同様の方法が雪氷コアに応用できれば, 粒径の分布や融解の有無に関して, 現場で容易に解析が可能となり, 大型輸送手段や冷凍施設などを考える必要がなくなる. そこで本研究では, 積雪の分野で用いられている光学的粒径測定法を雪氷コアに応用するための実験を行う.
  
研究内容・成果 積雪の関する光学的粒径測定法には大きく分けて900nmの波長を使った方法と1300nmの波長を使った方法がある. 本来であれば雪氷コアの解析に適した波長の検討から始めるべきであるが, 研究の初年度である今年度は光学的粒径測定法が実際に雪氷コアの解析に適用できるかを見極めるために, 申請者が所有する900nmの波長を測定できる装置を使った測定方法(以後NIR法)を用いて予備実験を行った. なお本予備実験においては, 実際に取得されたコアを使わず解釈を容易にするために, 粒径並びに密度をコントロールして作成した積雪条件の異なるいくつかの層からなる人工的な雪氷コアを用いた. その結果, コア内の積雪条件が異なる層境界において900nm領域における反射率が変化すること, しかもその変化は粒径や密度の変化に非常に敏感であるということが確認できた. このことからNIR法は雪氷コアの解析に十分適用可能であるという結論を得た. その結果を基に, 低温科学研究所が所有しているカムチャツカ半島のウシュコフスキー氷帽で取得された深さの異なり条件が違う複数のコアに関してNIR法で測定を行い, 実際の雪氷コアにおいても粒径の違いや融解の有無を判別できる可能性があることを確認した. 一方今回使った900nmの波長だと積雪内に侵入できる深さが深いために, 半割のコアを使用した場合, コア内に氷板などの層があるとその場所でコアケースの反射率の影響が顕著に表れる可能性があることが示唆された. それをふまえてH26年度は使用する波長域の違う光学的手法(900nm, 1050nm, 1150nm, 1290nm等)を用いて同様に実験を行い, 雪氷コア解析に最適な波長を決定するとともに, 実際の解析に適用をする予定である.
  
成果となる論文・学会発表等 山口悟 近赤外カメラを使ったフィルンコアの解析に向けた実験  グリーンランド氷床の質量変化と全球気候変動への影響 (低温科学研究所共同研究集会)2013/11/25-11/27