共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

氷塊衝突によるCFRP材料の損傷挙動の解明と氷塊代替え物質の探索
新規・継続の別 継続(平成24年度から)
研究代表者/所属 名古屋大学
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 田邊靖博

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

冨永明里 名古屋大学工学研究科 修士課程2年

2

森康平 名古屋大学工学研究科 修士課程2年

3

渡部直樹 北大低温研 教授

4

井上訓志 名古屋大学工学研究科 修士課程1年

5

石川昌志 名古屋大学工学研究科 修士課程1年

研究目的  CFRP(炭素繊維強化熱硬化性樹脂複合材料)は高い比弾性や比強度を生かし、高速移動体の構造部材としての応用展開がはじまっている。航空機の一次構造材としてすでに利用されている。高速移動体の構造部材は、種々の異物(氷、鳥、部材自身、はね石など)飛翔体との衝突が避けられない。特に、高層での雹の衝突が航空機の安全性に与える影響の解明は急務であるが、装置の制約から国内では全く行われていない。
 そこで、本研究では実環境下での高精度な実験解析データを取得・解析することを目的とする。
図1 飛翔体衝突に伴うCFRTPの欠損重量割合 図2 飛翔体の運動エネルギーの散逸割合 
研究内容・成果  まず、氷塊の代替物質探索を行った。その結果、低温(-15℃)での氷塊を模擬する材料となるウレタンゴムの硬度を見いだすことができた。これにより、室温において氷塊衝突の模擬試験が実施可能となった。
 次に、炭素繊維に4種類の表面処理(複合材料の界面処理)を行い、低温での飛翔体損傷に与える表面処理の影響について検討した。その結果、炭素繊維の表面処理が飛翔体損傷に与える影響は、室温での飛翔体損傷あるいは低温での準静的力学特性に与えるそれよりも、大きいことが分かった。この影響は、熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料で顕著であり、大きな質量欠損が計測された(図1)。本複合材料の低温での強度・弾性率の低下は小さい。しかし、破断歪みは、室温と比べて1/2〜2/3に減少していることから、破断歪みの現象が飛翔体との衝突による耐損傷特性の主要因であると推察される。これは、飛翔体衝突実験と同一拘束条件での複合材料の撓み計測(図2)からも支持される。
 他物質飛翔体での計測結果との比較から、衝突により氷塊が微細粉に破壊されて飛散するエネルギーは、元の氷塊の運動エネルギーの半分に達することが分かった。
 
 本研究を通して、次の重要な事項を発見あるいは解明することができ、炭素繊維強化複合材料の運輸部門へのさらなる応用展開に貢献できると考えられる。
 1) 雹の代替えとなりうる物質探索。
 2) 氷塊衝突現象のin-situ計測。
 3) 飛翔体の運動エネルギーの散逸機構解明。
 4) 界面特性の衝突損傷挙動への大きな影響。
 
図1 飛翔体衝突に伴うCFRTPの欠損重量割合 図2 飛翔体の運動エネルギーの散逸割合 
成果となる論文・学会発表等 1) Damage Behavior of CFRP Impacted by Ice Cylinder at -15℃:Y. Tanabe, Y. Takeda, M. Arakawa, N. Watanabe and I. Taketa;Proceedings of ISETE'13, 14-7-2 (2013.12.13-15) Nagoya

2) 繊維表面処理の違いによる CFRTP の機械的性質: 森康平, 田邊靖博, 渡部直樹; 平成25 年度衝撃波シンポジウム,3B2-4 (2014.03.05-07) 相模原