共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
冷圏沿岸海域における硝化菌の生態生理学に関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 日本大学 |
研究代表者/職名 | 専任講師 |
研究代表者/氏名 | 中川達功 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
高橋令二 | 日本大学 | 教授 |
2 |
荘健太郎 | 日本大学 | 大学院生 |
3 |
木都老誠 | 日本大学 | 大学院生 |
4 |
福井学 | 北大低温研 |
研究目的 | 寒冷圏の沿岸海域におけるアンモニア酸化菌および亜硝酸酸化菌の低温環境における硝化作用や亜酸化窒素ガス (N2O) 放出への寄与度を調べることを目的とし、次の実験を行った。1) 厚岸湖底泥のインキュベーションによるN2O発生実験、2) 厚岸湖底泥のアンモニア酸化バクテリアとアンモニア酸化アーキアの群集構造解析。 |
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研究内容・成果 | 2013年7月18日に北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの厚岸臨海実験所を調査拠点とし、厚岸湖内の4箇所(地点A、B、C、D)の底泥を採取した。採取時の環境データは次の通りであった。地点A:水温14.7℃、pH8.4、底泥の色-薄黄色、地点B:水温20.3℃、pH8.7、底泥の色-黒色、地点C:水温17.3℃、pH8.5、底泥の色-灰色、地点D:水温19.4℃、pH7.7、底泥の色-薄い灰色。アマモ群落は地点Bで最も発達していた。地点Aにはアマモ群落は無く、河川水の混入があるため、水温が低かった。4地点の底泥からのN2O発生の違いを調べるため、 50mL血清ビンに底泥15g、ろ過滅菌した海水15mLを添加して密閉し、20℃暗所で10日間の培養後、培養びん内のN2O濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。その結果、地点Aと地点Dの泥からN2O 発生が認められた。しかし、地点Bと地点CからはN2O 発生が見られなかった。4地点の底泥中のアンモニア酸化バクテリア (AOB) とアンモニア酸化アーキア (AOA) の量と種類を推定するため、各底泥からDNAを抽出し、AOBとAOAのamoA遺伝子を標的としたPCRを行った。その結果、N2O 発生が認められた地点Aと地点DからはAOBのamoA遺伝子断片の量が多く検出された。一方、地点Bと地点CからはAOBのamoA遺伝子断片の電気泳動上の傾向強度は非常に低かった。AOAのamoA遺伝子断片の電気泳動上の傾向強度は全ての地点において非常に低かった。地点Aと地点Dはアマモ群落が発達していなかったため、泥に酸化層が多くあった。一方、地点Bと地点Cアマモ群落が発達していたため、黒色の嫌気層が試料の泥に多く観察された。AOBのamoA遺伝子断片のDNA塩基配列解析の結果、全ての地点において、中国青島膠州湾、アメリカサンフランシスコ湾河口堆積物、アメリカアラスカ北極海沿岸、アメリカニューイングランド地方塩湿地堆積物の未培養AOBのamoA遺伝子に近縁なAOBが多数存在することが確認された。これらの結果より、富栄養化が進んでいる厚岸湖の底泥酸化層ではAOBによるN2O 発生の可能性が示唆された。 |
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成果となる論文・学会発表等 |