共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
北海道河川流域環境の変化と沿岸域の生産性との応答性研究 |
新規・継続の別 | 継続(平成24年度から) |
研究代表者/所属 | 金沢大学環日本海域環境研究センター |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 長尾誠也 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
山本政儀 | 金沢大学環日本海域環境研究センター | 教授 |
2 |
関宰 | 北大低温研 | |
3 |
三寺史夫 | 北大低温研 |
研究目的 | 寒冷域の湿原や森林域は有機態炭素の貯蔵域として作用するとともに、海洋の生物生産に必要な栄養塩と微量必須元素の鉄の供給源として重要である。沿岸域での生物生産性を持続的に維持するためには、流域環境の変化と沿岸域の生物生産性との関係を評価する必要がある。本研究では、北海道の森林と湿原域が混在する別寒辺牛湿原・厚岸湖流域を対象に、堆積物有機物の堆積過程と堆積量の変動を解析した。その結果、厚岸湖内の堆積物にはTOC含有量、C/Nモル比に大きな変動は認められなかった。一方、河口部付近で採取した柱状堆積物には、近年、TOC含有量とC/Nモル比が減少したことから、陸起源有機物供給量の減少が考えられる。 |
研究内容・成果 | 1. はじめに 寒冷域の湿原や森林域は有機態炭素の貯蔵域として作用するとともに、海洋の生物生産に必要な栄養塩と微量必須元素の鉄の供給源として重要である。しかし、人為的な活動、あるいは温暖化の影響等により河川流域環境の変化が報告されている。 本研究では、北海道の森林と湿原域が混在する河川流域を対象に、河川へ供給される栄養塩・鉄の流入量の変化と沿岸域での生物生産性との関係を堆積物の記録を解析することにより評価する。平成25年度は北海道道東の別寒辺牛湿原河川が流入する厚岸湖において、有機物の堆積状況に関する調査を行った。 2.試料と方法 厚岸湖は面積32 km2、周囲長25 km、平均水深1.5 mの規模の半閉鎖水域で、低層湿地から構成される別寒辺牛湿原を流れる別寒辺牛川からの流入が主な淡水の供給源である。厚岸湖では2012年2月7日には測点AK-40(□)、2013年3月4-5日にAK-01とAK-02(■)で氷上から柱状試料を採取した。 堆積物の有機炭素(TOC)と全窒素(TN)含有量は、1M塩酸により炭酸塩除去、乾燥粉末化後に元素分析計で測定した。Cs-137とPb-210の測定はGe検出器で測定した。湖底堆積物に存在するRa-226から生成されるPb-210を差し引き、大気由来のexcessPb濃度-210としてプロットし堆積速度を求めた。 3.結果と議論 厚岸湖柱状堆積物のCs-137とexcessPb-210濃度の鉛直分布を図2に示す。別寒辺牛川河口域に近い測点AK-40では、Cs-137放射能濃度の1963年と考えられるピークが認められた。また、excessPb-210 は堆積物の深さに対して指数関数的に減少していた。この傾きから堆積速度を見積もると0.49g/cm2/yrであった。一方、より河口に近い測点のAK-1では、excessPb-210 は表層堆積物以外は、6〜27Bq/gの範囲で変動し、静穏な堆積環境ではないことを示している。 図3には、別寒辺牛川河口に近い地点(AK-40)と厚岸湖南岸付近(AK-2)で採取した柱状堆積物試料のTOC含有量と炭素/窒素比(C/Nモル比)を示した。測点AK-40では、堆積物の深さ0〜11 cmで0.97〜2.4%、それ以深では1.1〜1.8%と異なるTOC含有量であった。C/Nモル比も表層では10.0 ± 0.5と深さ11 cm以深の11.6 ± 0.3に比べて低い値を示した。一方、湖内の測点AK-2では、表層堆積物を除き、TOC含有量は0.74 ± 0.11%、C/Nモル比は10.1 ± 0.5とほぼ一定の値を示した。つまり、厚岸湖の海洋起源有機物生産量はそれほど大きな変動が生じていないことを示している。以上の結果より、AK-40の表層堆積物の有機物含有量と質の変動要因として、別寒辺牛川を通して供給される陸起源有機物の供給量が減少した可能性が考えられる。 |
成果となる論文・学会発表等 | 長尾誠也、別寒辺牛川ー厚岸湖における陸起源粒子態有機物の移行と堆積状況ー、北海道大学低温科学研究所 共同研究集会「物質循環から見た流域・汽水域・沿岸連環の解明」、2014年3月5日、北海道大学低温科学研究所 |