共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
惑星表層における氷層の成長・破壊に関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 東大地震研究所 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 栗田敬 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
猿谷友孝 | 東大地震研究所 | 大学院生博士課程 |
2 |
波多野恭弘 | 東大地震研究所 | 准教授 |
3 |
庄司大悟 | 東大地震研究所 | 大学院生博士課程 |
4 |
吉田朱里 | 東大地震研究所 | 大学院生修士課程 |
5 |
黒川愛香 | 東大地震研究所 | 大学院生修士課程 |
6 |
市原美恵 | 東大地震研究所 | 助教 |
7 |
V. Vidal | ENS de Lyon | 准教授 |
8 |
D. Baratoux | MPO | 准教授 |
9 |
山本哲生 | 北大低温研 | |
10 |
田中秀和 | 北大低温研 |
研究目的 | 惑星・衛星の表面や内部にはさまざまな形態の氷が存在し、そこで起きている現象に重要な影響を及ぼしている.本取り組みでは現象を個別に取り上げるのではなく、地球惑星科学の文脈のなかでの氷関与現象の位置づけを明確にすることを目指す. |
研究内容・成果 | 今年度は惑星科学における以下の4つのテーマを取り上げた. 1)アイスレンズの形成機構の研究 均質粒径のガラスビーズ+水系の冷却実験によりアイスレンズの形成機構の解明に取り組んだ.端面温度をステップ状に氷点下に設定し、形成されるアイスレンズの厚さ、形成位置を測定した.1ミクロン径までは粒径が細かいほど厚いレンズが、端面よりより遠い位置に形成されたが、1ミクロンよりも小さな粒径では厚さが減少する.これらの傾向はregelation による固体粒子の凍結前線からの吐き出しと界面での不凍水の供給の流体力学を組み合わせたモデル(Rempel 2009に基づく)によりよく説明できることが分かった. 2)水(氷)・マグマ相互作用によるRootless Cone の形成プロセスの研究 高温のマグマが水・氷と接触すると2次爆発が生じ、その爆発により火砕丘(Rootless Cone)が形成される.表層付近に多量の水・氷の存在する火星では多数のRootless Cone が発見され、溶岩流の同定の重要な指標となっている.しかしその形成機構は未解明な部分が多く、地球上の類似地形との比較研究による解明が待たれる.本研究ではアイスランド・ミヴァトン湖周辺のRootless Coneの地形調査・火砕物の調査を通して破砕度(fragmentation)の見積もり、爆発度(explosivity)の見積もりを行った.火砕物のサイズ分布;N(a)=Ca^-bにおけるべき係数,bと火砕物の平均粒径や火砕丘の傾斜はよい相関を示し破砕度が爆発性の指標として使えることが明らかになった. 3)氷レオロジーモデルに基づく氷衛星の潮汐発熱量の見積もり 外惑星の氷衛星のうちで内部海の存在が推定されているEuropa,Enceladus についてはその維持のための熱源に関してさまざまなモデルが提唱されている.長寿命の放射性元素以外には主惑星との潮汐相互作用による潮汐発熱が考えられている.本研究では氷のレオロジーモデルによりEnceladus の潮汐発熱量がどのように変わるのか、具体的な値を計算した. 4)粒状体の熱伝導度の研究、 粒状体の熱伝導度は粒子同士の点接触状態が大きな制約になり、固体の熱伝導度よりも一桁以上小さな値を持つ.これは惑星表面のレゴリス層の熱伝導度を考える上で重要なポイントである.一方火星表層ではこのような粒状体層に大気からの水・二酸化炭素の氷の付着が想定されており、第2相の付加による熱伝導度の変化の見積もりが重要である.本研究ではガラスビーズの熱伝導度を低温環境下で測定し、氷の付着の影響を見積もった.ネック部分に付着を想定したモデルでは熱伝導率の大きな増加が予想されていたが、実験ではこのような増加は確認できなかった.この結果はSiegler et al 2012と同様なもので、現時点でモデルの予想と実験の間に一致が見られていない. |
成果となる論文・学会発表等 |
Noguchi,R. et al, Double Rootless Cones around Lake Mivatn in Iceland, 45th LPSC #1595 Saruya,T.,K.Kurita and A.Rempel, Micro-physical controls and particle size dependence on ice lens formation in Physics and Chemistry of Ice 2014 Shouji,D.,H.Hussmann,K.Kurita,and F.Sohl,Ice rheology and tidal heating of Enceladus,Icarus 226,10-19,2013 |