共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
昆虫の凍結耐性に関わる体液の氷結晶成長に関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 島根大学生物資源科学部 |
研究代表者/職名 | 助教 |
研究代表者/氏名 | 泉洋平 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
古川義純 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 昆虫の寒冷地への適応は、凍結すれば死亡する凍結回避型と凍結しても耐えられる耐凍型の二つに分けられる。申請者らは耐凍型であるニカメイガ幼虫は凍結時に細胞内の水を体液に排出し、体液に蓄積されたグリセロールを細胞内に取り込むことにより-20℃において凍結による障害を回避することを明らかにした(Izumi et al. 2006,2007)。また、細胞膜を構成するリン脂質の低温への適応についても明らかにしている(Izumi et al. 2009)。本研究では、凍結時に体液がどのような結晶成長を行うのか、それにより耐凍性にどのように貢献しているのかを明らかにする。 |
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研究内容・成果 | 研究内容 耐凍性をもつ本種越冬幼虫は体液が凍結するがそれによる細胞膜への物理的な障害は観察されなかった。しかし、耐凍性を持たない非休眠幼虫は体液の凍結により細胞膜に障害を受けた(Izumi et al. 2005)。凍結下での細胞膜の機能の維持あるいは破壊がどのような機構によって引き起こされるのかを明らかにするため、体液の構成成分(塩・糖・タンパク質)を越冬幼虫と非休眠幼虫との間で比較するとともに、それぞれの体液の氷結晶を観察、比較する。 研究成果 越冬幼虫と非休眠幼虫の間に体内水分含量の違いは認められなかった。しかし、体液の塩、糖、タンパク質の濃度は越冬幼虫で有意に高かった。氷結晶の観察における予備実験において、-5℃にて2時間曝露したのち、-15℃の低温実験室にて凍結させると、解凍後の越冬幼虫の生存率は100%となった。それに対して、非休眠幼虫ではすべての個体が死亡した。凍結した両幼虫をクライオミクロトーム用のコンパウンドで包埋することで、低温実験室内の滑走式ミクロトームで凍結切片の作成が可能であった。しかしながら、氷結晶が観察できるほどに薄い切片を作成することはできなかった。越冬幼虫は細胞内凍結を防ぐことで耐凍性を得ているため、体液は凍結していても組織内は凍結していない。このためサンプルの硬さが均一ではないと考えられ、そのことが薄切作成の妨げになったと考えられた。今後は、薄切作成時の温度調節など、最適な条件を決定し氷結晶の観察を行いたいと考えている。 |
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成果となる論文・学会発表等 |