共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

気象の時間変動と道路構造別冬期路面状態の予測に関する研究
新規・継続の別 継続(平成19年度から)
研究代表者/所属 (独)土木研究所寒地土木研究所
研究代表者/職名 上席研究員
研究代表者/氏名 石田樹

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

高橋尚人 (独)土木研究所寒地土木研究所 総括主任研究員

2

徳永ロベルト (独)土木研究所寒地土木研究所 主任研究員

3

切石亮 (独)土木研究所寒地土木研究所 研究員

4

川端優一 (独)土木研究所寒地土木研究所 研究員

5

藤本明宏 (独)土木研究所寒地土木研究所 研究員

6

石井吉之 北大低温研

研究目的 本研究では、熱・水分収支による路面状態推定モデルを構築している。しかし、気象や路面雪氷状態などの現地観測データが不足していることから、モデルの精度検証は十分になされているとは言い難い。モデルの精度を高めるためには、気象観測・路面雪氷観測を引き続き実施し、様々な気象条件において路面雪氷状態の観測値と計算値を比較する必要がある。
そこで本研究では、新たに現道で気象観測・路面雪氷観測を実施し、モデルの計算精度を検証した。その際、モデルで出力される雪・水・氷質量と目視で判断した路面雪氷状態の関係を判別分析から明らかし、この分析結果をモデルに反映させることでモデルの計算精度の改善を行った。
図1 路面温度の計算値と観測値の比較 図2 従来の判別フローを用いたモデルによる路面雪氷状態の計算値と観測値の比較 図3 線形判別分析を用いたモデルによる路面雪氷状態の計算値と観測値の比較
研究内容・成果 1.現道試験の内容
現道試験は、一般国道12号線(江別太)にて平成25年12月6日~平成25年12月17日に亘って実施された。現道試験は、気象観測と路面雪氷観測に大別される。気象観測では、風速、気温、相対湿度、日射量、時間降雨・降雪強度、大気(長波)放射量を、路面雪氷観測では舗装温度(土被り厚60㎜)および路面温度をそれぞれ測定した。また、既存のCCTVカメラによる道路状況画像を収集した。

2.モデルの精度検証
2.1 路面温度
図1に路面温度の計算値と推定値を示す。同図の青色の実線は計算値、緑色は観測値である。同図には舗装温度の観測値を赤色で併せて示す。同図より路面温度の計算値は舗装温度のそれと良好に一致していることが分かる。

2.2 路面雪氷状態
 まず、従来の雪、水および氷質量(qsnow、qwaterおよびqice)を基準にした路面状態判別フローを用いたモデルによる路面雪氷状態と計算値と観測値を比較したものを図2に示す。この場合の路面雪氷状態の再現率は71.9%であった。
 次に、本研究では線形判別分析による路面状態判別を組み込んだモデルの結果について述べる(図3)。同図は説明変数をqsnow、qwaterおよびqiceの3つとした場合の計算結果を赤線で、説明変数をqsnow、qwater、qiceおよび路面温度の4つとした場合の計算結果を緑線で、それぞれ示す。青色のプロットは観測結果である。同図に示すように、両計算結果に大差はなく、いずれも観測値を良好に再現した。ただし、12月11日から12月13日の期間は、計算では凍結路面が出現しているものの、観測では乾燥路面であり、計算結果と観測結果に差異が発生した。この要因として、この期間のqiceの計算値は無視できるほど僅かであったものの、路面状態判別では凍結と判定したことが考えらえる。こうしたエラーは、薄層の雪氷が存在する路面状態のデータ蓄積と判別分析のパラメータの見直しを行うことで改善できると考えられ、今後改善を図りたい。線形判別分析による路面状態判別を用いたモデルの路面雪氷状態の的中率は78.8%であった。本研究により、従来のモデルより路面雪氷状態の的中率を約10%改善できた。

3.まとめ
本研究により、新たに気象および路面雪氷状態観測データが蓄積され、路面状態推定モデルの精度検証を行うことができた。線形判別分析による路面状態判別をモデルに取り入れることで、モデルの計算精度を10%程度改善することができた。
図1 路面温度の計算値と観測値の比較 図2 従来の判別フローを用いたモデルによる路面雪氷状態の計算値と観測値の比較 図3 線形判別分析を用いたモデルによる路面雪氷状態の計算値と観測値の比較
成果となる論文・学会発表等