共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
森林生態系の炭素シンク機能と樹木個体群の時空間動態との関係解析 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 筑波大生命環境 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 廣田充 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
横沢正幸 | 静岡大学 | 教授 |
2 |
中河嘉明 | 筑波大学生命環境 | 博士後期課程 |
3 |
原登志彦 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 森林における様々な物理量の頻度分布や、物理量間の関係がベキ乗則や対数正規分布などのロングテールな分布に従うことが知られている。例えば、クライバーの法則、樹木1個体の末端枝のサイズ分布、個体葉面積と個体葉総数の関係、個体のサイズ分布、自己間引き則、パッチサイズの頻度分布など。これらの森林に現れるロングテールな分布の形成メカニズムを調べることと、これらの分布間の関係性を調べることは、森林のダイナミクスの理解や統一理論の構築において重要である。本研究では、その第一歩として、対数正規分布であることが知られている林内の相対照度の頻度分布と「競争強度場」の頻度分布の関係を調べる。 |
研究内容・成果 | 我々は「競争強度場」という個体間競争の新しい見方を導入した。「競争強度場」とは、任意の地点に存在する個体が近隣個体から受ける競争の負の影響の総和である。個体間競争を含んだ生長・競争サブモデルを含む連立微分方程式モデルを3種類用意し、森林の毎木データを用い、モデルのパラメータをマルコフ連鎖モンテカルロ法で推定した。3種類のモデルはそれぞれ、競争サブモデルにおいて、ある個体が周辺個体に与える競争の強さの距離に伴う減衰様式が異なる(図1(a) - (c))。距離増大に伴い、競争の強さが、タイプ(a)では直線的に減じ、タイプ(b)では上に凸で減じ、タイプ(c)は下に凸で減じる。タイプ(a) ~ (c)をそれぞれ含んだ生長・競争モデルを用いてシミュレーションを行い、時間経過(0年-105年)で競争強度の場がどのように変化するか調べた。また、その際、競争の影響を受ける個体のサイズによって、競争強度の場は異なるので、サイズクラス(1 ~ 5)に分けて、サイズクラスごとに調べた。結果、タイプ(a)と(b)では、時間が経過するにつれて、競争強度の場の頻度分布は「左」に裾を引いた一山形の分布になった(図2(a)、(b))。とくにサイズが大きい(サイズクラス1→5)ほど、その傾向は強かった。一方、タイプ(c)では、時間が経過するにつれて、競争強度の場の頻度分布は「右」に裾を引いた一山形の分布になった(図はない)。とくにサイズが大きいほど、その傾向は強かった。 Ogawa(1967)では、林内の相対照度の頻度分布は対数正規分布で近似されることが報告されている。Yoda(1974)では高さが減じるほど、一方、Hagiwara et al. (1982)では高さ6m付近で、異なる高さの相対照度の頻度分布が「右」に裾を引いたL字分布になることが報告されている。これらの相対照度の頻度分布の結果は、競争の距離減衰のタイプが(a)と(b)のときの競争強度の場の傾向と類似している。すなわち、競争強度が低い(≒相対照度が高い)領域において、長く裾をひいている。これらの結果より、相対照度の頻度の対数正規分布は、競争の距離減衰のタイプ(a)と(b)のような、距離にともなって競争の効果が比較的早く減じる場合に整合性があり、このような場合に形成される可能性が示唆される。 引用文献 H. Ogawa, In Proceeding report of research group on method s for assessing primary production of forests: T. Kira, ed. 45-52. 1967 K. Yoda, Japanese Journal of Ecology. 24(4). 247-254. 1974 A. Hagiwara et al., Journal of Japanese forest society. 64(6). 220-228. 1982 |
成果となる論文・学会発表等 |
Y. Nakagawa, M. Yokozawa, T. Hara. Competition among plants can lead to an increase in aggregation of plants, Ecological Modelling, in review. 中河嘉明・廣田充・横沢正幸・原登志彦 (2013) アカマツ群落からミズナラ群落への遷移過程における個体の空間分布の解析、第45回 種生物学シンポジウム |