共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

陸上土壌における炭化水素分解硫酸還元菌に関する研究
新規・継続の別 継続(平成24年度から)
研究代表者/所属 高知工業高等専門学校
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 東岡由里子

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

福井学 北大低温研

2

小島久弥 北大低温研

研究目的  硫酸還元菌は有機化合物を電子供与体として利用し、硫酸塩を硫化物に還元する偏性嫌気性微生物である。これらのバクテリアは海洋堆積物、干潟、湖沼、嫌気汚水処理槽や反芻動物のルーメンなど嫌気環境に広く分布する。海洋堆積物における硫酸還元菌の研究報告は多い一方で、陸上土壌における硫酸還元菌についての研究は非常に少ない。本研究では、陸上土壌における硫酸還元菌の系統的・機能的多様性を、培養法を中心とした手法により解明することを目的とする。
  
研究内容・成果  前年度は北海道大学構内で採取した陸上土壌を接種源として用いた集積培養系の確立を試みたが、菌体の増殖および硫酸還元活性は認められなかった。そこで、本年度は他の接種源を用いて集積培養系の確立を試みた。用いた接種源はビニルハウス栽培のナス畑土壌である。本研究は硫酸塩濃度が海洋に比べて低い陸上土壌に着目するが、硫酸塩がほぼ存在しない環境試料を用いて培養系を確立するのは非常に困難であると考えられる。なおかつ、硫酸還元菌は偏性嫌気性微生物であるため、嫌気条件が十分形成されている環境が望ましい。そこで、まずは、ある程度硫酸塩が存在する陸上土壌に着目した。ナスの栽培では水分を多く与えることから、土壌孔隙が水で満たされ、さらに好気性微生物による有機物分解の酸素消費により、嫌気条件が容易に形成されていると予想される。また、窒素肥料の一つである硫酸アンモニウム(硫安)は、窒素分が消費された後に硫酸イオンが硫酸カルシウムや硫酸となって土壌に残る。したがって、硫酸イオンを電子受容体として利用する硫酸還元菌が存在し、有機物分解に関与している可能性がある。また、非海洋環境試料として、淡水土壌である湖沼堆積物を用い、同様に硫酸還元培養系の確立を試みた。
 エネルギーおよび炭素源として乳酸塩と酵母抽出物を含む硫酸還元菌用培地を用いて30℃で静置培養を行った。本研究では、炭化水素分解硫酸還元菌を標的としているが、硫酸還元菌は、海洋環境に比べて陸上環境では遍在していないと想定される。そこで、より増殖しやすい培養条件で硫酸還元菌の集積を行うため、炭化水素と比較して毒性が低い有機酸塩を培養基質として用いた。菌体の増殖を目視で確認後、同様の培地を用いて植え継ぎを行った。また、培養系内の硫酸還元活性を調べるために、経時的に硫化銅溶液を用いて硫化水素の生成を確認した。
 畑土壌を接種源として用いた培養系では、約10日間の培養で菌体の増殖と硫化水素の発生が確認できた。植え継ぎを繰り返し、接種源を含まない集積培養系を確立した。
 湖沼堆積物を接種源として用いた培養系では、約2日間の培養で菌体の増殖と硫化水素の発生が確認できた。また、培養基質として乳酸塩の代わりに安息香酸塩を加えて培養を行ったところ、同様に菌体の増殖と硫酸還元活性が確認された。畑土壌と湖沼堆積物を接種源とし、硫酸還元培養系を確立した。各培養系からDNA抽出を行い、16S rRNA遺伝子を標的としたPCR-DGGE解析を行った結果、接種源および培養基質による群集構造の違いが見られた。今後、DGGEバンドのシーケンス解析を行い、培養系内の微生物種の同定を行う予定である。
  
成果となる論文・学会発表等