共同研究報告書


研究区分 萌芽研究

研究課題

光合成生物タンパク質複合体データベースの拡充と公開
新規・継続の別 萌芽(2年目/全3年)
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 高林厚史

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

遠藤剛 京都大学 准教授

2

士反伸和 神戸薬科大学 助教

3

山本興太郎 北海道大学理学部 教授

4

藤田知道 北海道大学理学部 准教授

研究目的 本研究では電気泳動(Blue-Native PAGE)と質量分析を組み合わせた手法でタンパク質複合体を網羅的に解析し、1) 幅広い光合成生物(陸上職物、藻類、シアノバクテリア)のタンパク質複合体を網羅的に検出し代謝ネットワークに関する新たな知見を得ると共に、2) その結果をデータベースの形でコミュニティに広く公開することを目的とする。特に、寒冷圏に特徴的な珪藻や褐藻のタンパク質複合体解析は従来までにほとんど行われておらず、本研究の意義は大きいと期待できる。
  
研究内容・成果 本研究では、Blue-Native PAGE (BN-PAGE) とLC-MS/MS解析、ラベルフリーの半定量解析を組み合わせることで、検出されたすべてのタンパク質についてprotein migration profileを作成し、それを用いて網羅的なタンパク質複合体の検出(予測)を試みている。
 前年度は、本研究で構築したWebデータベース「PCoM-DB(http://pcomdb.lowtem.hokudai.ac.jp/proteins/top)」にて、シロイヌナズナチラコイド膜およびシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803細胞についての解析データを公開し、それについての論文を前年度に発表した(論文[3])。また、その解析系を利用した論文を2報発表した(論文[1],[2])。現在までに、陸上植物、藻類、シアノバクテリア、非光合成細菌についての解析を行ってきたが、今後もさらに新たな生物種やサンプルの解析と、その公開を進めていく予定である。なお、申請時には全く予想していなかったが、この実験系は原核生物において非常に効果的であることが明らかになりつつあり、この点には特に注目して進めていきたい。一方、真核生物の場合は、解析前のオルガネラ等の分画が効果的な解析には重要であることが明らかになってきた。
同時に、現在、本研究の解析から見出した複数の新規因子についての詳細な解析も進めており、最も解析の進んだ1つの新規因子については予測通りの結果が得られている。これら新規因子についての結果を発表していくことで、本研究の解析およびデータベースの有用性が示せるのではないかと期待している。
最後に、「PCoM-DB」の機能追加、解析サンプル追加、及び、システムのバージョンアップを目的とした「PCoM-DB ver2」の作成を進めている。この新規バージョンの作成と公開によって、利用者が増えることを期待している。
  
成果となる論文・学会発表等 [1]Takahashi K, Takabayashi A, Tanaka A, and Tanaka R(2013)Functional analysis of light-harvesting-like protein 3 (LIL3) and its light-harvesting chlorophyll-binding motif in Arabidopsis. J. Biol. Chem. in press

[2]Kunugi M, Takabayashi A, and Tanaka A (2013) Evolutionary changes in chlorophyllide a oxygenase (CAO) structure contribute to the acquisition of a new light-harvesting complex in Micromonas. J. Biol. Chem. 288:19330-19341

[3]Takabayashi A, Kadoya R, Kuwano M, Kurihara K, Ito H, Tanaka R, Tanaka A (2013) Protein co-migration database (PCoM -DB) for Arabidopsis thylakoids and Synechocystis cells. SpringerPlus, 2:148.